- 信念・価値観というものは誰しももっている。
- 誰が社長になっても信念・価値観というものがある!
- 生きていく上で大切にしなければいけないことも違う!
- その人にとって許せないことも全く違う!
金八先生とごくせんの間でも、教育の中では価値観が必ず違います。
生きていく上で大切にしているものも違う。だから、金八先生では許されることであっても、ごくせんの前では、その拳がとんでくるかも知れない。
ところが、私たちは凡人です。金八先生やごくせんのようにカリスマもなければ、短期間で人を変えていく能力などない。そこで、小さな会社では、毎日、何かを行うことによって、自動的に価値観を浸透させていく仕組みが必要です。
そのために、価値観を言語化する必要があります。
しかし、一度、言語化しておくと、人材採用時、新入社員を教育する上でもとても役に立ちます。逆に、これらの価値観がないと、いつもいつも注意したりしなければなりません。
人は、2、3度注意したくらいでは変わらない。
この価値観を社員に浸透させるために活用している会社があります。
世界的有名な5つ星ホテルのリッツカールトンホテルが、全世界で全く同じサービスを心がけるために、全社員が常に持ち歩いているものです。それが、クレドカードと呼ばれるもので、全社員の胸ポケットにしまわれています。クレドとは、誓いとか信条とかいう意味があるらしく、このホテルでは、20項目にまとめられています↓(裏面に20項目の信条が記載されています)
私も、以前、組織が崩壊しそうになったときに、このクレドを作成して活用しました。
うちの組織はむちゃくちゃだ・・・こういう経営者に薦めているのが、このクレドカードの作成です。
クレドカードの内容
まずは、クレドとはどういうものなのかサンプルをご紹介しましょう!
ある中小企業の17項目にも及ぶクレド・サンプル例です↓
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- このクレドは、○○○○の信条です。私たちは、クレドに表現された価値観を自分のものとして受け入れます。そして、クレドに基づき判断・行動します。
- 私たちのミッションは、世界の子供たちが平和に暮らせる地球になるために、インターネットビジネスを通じて、新しい未来への空間を創造し展開していくことです。
- 私たちは、プロフェッショナルなメンバーです。私たちの電話応対、事務処理を見て、クライアントは私たちの会社を判断します。私たちはプライドを持って、最高レベルのサポートを提供します。
- 私たちは、常に80:20の法則に留意し、物事の最も重要な2割を見極める努力をしますので、どうでもいい仕事に8割の時間を使いません。
- 私たちは、チームワークを重視します。また、チームメンバーは尊敬できる友人です。友人が困っているときには進んで協力します。
- 私たちは、性格・人間性の良い人を評価します。性格・人間性の良いとは、次のような人です。裏表がない人。人に責任をなすりつけない人。ため息をつかない人。大きな声であいさつができる人。否定的な口癖を言わない人。人の陰口を言わない人。「ありがとう」を頻繁に言える人。自分の非を認めて素直に謝れる人。
- 私たちは、仕事だけでなく、人生の幅を広げることが大好きです。そして、いろいろなことにチャレンジします。そして、仕事と家庭のバランスをとるように心がけます。なぜなら、家族と職場は相似形でり連動しているので心理ゲームが働くことを知っているからです。
- 「できない」「わからない」と初めからあきらめるのではなく、アプローチを変えて対応します。「もし、できるとしたら・・」というミラクルクエスチョン自分に行います。私たちの能力は無限ですから、できる方法は必ずあります。
- 私たちは、時間を守ります。遅刻する際には、必ず連絡します。
- 私たちは、整理整頓を重視します。毎日身の回りを整理整頓することで、私たちの心もきれいにします。
- 人のいやな面が見えたとき、それは自分の嫌な面を教えてくれるシグナルです。異論・感情的な行き違いがある場合には、直接、本人にいうのが成熟した大人の行動です。その際、私たちは、円滑なチームを運営しているため、言葉遣いに気をつけます。あらゆる面でチームメンバーの良い点を見つけ、ねぎらうようにします。
- 私たちは、問題が起こったときに喜びます。会社が成長し続ける限り、問題点は生じます。問題点は、会社と社員を成長させるための素晴らしいシグナルだからです。
- お客様からのクレームは全員で協力し、翌日まで持ち越さないように徹底します。「どのようになれば、ご満足されますか?」と聞くのが、クレーム対応法の極意です。クレームに対しては会社としての筋をとおしながら、会社の非を認め心からお詫びするだけでなく、クレームが発生した本質的な原因と目に見えないメッセージを追究していきます。
- 私たちは、変化や混沌を楽しむ心の余裕を持ちます。混沌がなければ創造は起こりません。私たちの重大な仕事のひとつは混沌に光を当てて、秩序化することです。
- 私たちは、自分で決断できる能力を持ちます。上司に「どうすればいいですか?」と聞くのではなく、「こういう問題が発生しているが、こういう理由からこのように進めていきたい・・・」という思考法をします。
- 私たちは原因思考にとらわれず、結果思考を重視します。結果思考とは、自分が手に入れたい未来の状況から考えていく脳に効果的な思考法です。自分が実現したい状況どんな状況か? それを実現する価値はあるか? 現在の状況の違いは? その違いを埋めるための障害は? 必要な支援を何か? 実現したことはどうすればわかるのか?
- 私たちは報・連・相を徹底します。特にクレームについては上司に報告します。私たちはチームで仕事をしています。問題を自分で抱え込まないようにします。
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クレドカードの作り方
<項目を洗い出す>
1、 社長のネガティブな部分を書き出す。
社員への怒り、絶対譲れない信念・価値観、ゆるせない行動、常日頃から感じている違和感、改善してほしいこと・・・などを書き出していく。
2、 その後、それらのネガティブな文章を肯定文に変える。
●遅刻はするな!
●文句言わずに命令に従え! など
これを、肯定文に変えていく。
- 私たちは時間を厳守します。なぜなら、遅刻をすると相手からエネルギーを奪うことになるからです。時間もエネルギーということを決して忘れません。
- 私たちは、何事にも素直になります。例えば、上司の命令であっても謙虚に耳を傾け、意図を理解しすばやく対応する努力をします。
3、 社長のポジティブな部分を書き出す。
- 業務でよく使う法則・・・80:20の法則など
- 生きていく中で大切にしている教訓など
- 会社のミッション
など
以上の項目を必ず肯定文で書く。
重要なので、もう一度いいます・・・必ず、肯定文で書いてください。
例)NG例・・・私は、人まで話すとき全く緊張しないで話すことができる。
OK例・・・私は、どんな場所でもリラックスして自分の思いどおりに伝えることができる。
潜在意識は、否定文も肯定文も判別できないので、マイナスな言葉はそのまま受けてしまうからです。
<クレドの項目数>
よく、何項目あればいいんですかと質問を受けますが、最初は、8項目を目安にして、将来的には20項目くらいになるようにと伝えています。根拠は、まずクレドを作ることが目的だから、最初は8項目くらいでも十分。
クレドの読み合わせが1日1項目として、1ヶ月で1ターンはした方がいいので、営業日より少ない20項目くらいにすればいい。最初は、数や内容よりも、まず、毎日続けること。
人の信念や価値観が変わるのは、2通りあると言われている。
- 1つは、衝撃的な事実を目の当たりにしたとき。
- もう一つは、毎日の繰り返し。
だから、毎日行うことにこそ意味があるし、同時に社員共育にもなる。
クレドの内容には、十分気を使っていただきたい。
<クレドを深化・進化させる①>
最初に完成したこの導入期のクレドの内容は、たぶん、社長のエゴが中心で作られることになる。
なぜならば、普段からむかついているスタッフへの怒りを肯定文に変換した文章であったり、社長自身のことを棚に上げながら自分自身の理想を文章化してあったりするからだ。
つまり、自分自身を棚に上げて、スタッフを変えようとするのが導入期のクレドなのだ。
ところが、毎日、このクレドを実践しているわずかな会社を見ていて思うのは、毎日実践していると、そのうちスタッフ全員が、無意識にこのクレドの内容と社長の行動や、同僚の行動に照らし合わせてくるようになり、あれこれ判断していくようになってくる。
だから、社長は特に、クレドを作ったその瞬間から、クレドを自分自身で遵守する姿勢を持たないと、行動や言動に一貫性がなくなる。そして、見抜かれてしまう。
「私たちは組織に対して不平不満をいいません。なぜならば・・・」といった内容のクレドがあるのに関わらず、スタッフに対して社長という権力を利用して文句や悪口をいっているような社長の会社がこの先、最強の会社になっていくだろうか。
実は、このスタッフを変えていくために社長が考えていくクレド、実は、クレドによって一番変わらなければならず、一番必要なのは、実は社長だった・・・というオチになることに気がつく。
がんばれ、社長!
クレドの内容については、思いつく限り、項目を順次追加していけばいい。
また、クレドは、社長を含むスタッフ全員の行動の基準となるもの、という意識を持っていただきたい。
「人に親切をするのは当たり前だ」といったとしよう。
だた、親切をするシチュエーションや、ケース、新設の度合いは、人によって違う。
この違いの誤差を最小限にするために、クレドは存在する。
朝のミーティングなどで、一人ずつ意見を話してもらうことによって、その違いを知ることができる。これが最も重要。
想像してみて欲しい。
ある会社は、経営理念が壁に貼っているだけ。
また、ある会社は、経営理念を、朝、全員で唱和しているだけ。
しかし、これからのあなたの会社は、そうではない。
クレドを作って、自分の意見や感想を言わせることを習慣するということは、スタッフ自らの頭で考えをまとめていく作業と、それをアウトプットしていく作業の2つを行っていくということなのだ。
さらに、喋ったあとに、全員の拍手という承認の仕掛けを作ることで、モチベーションも上がる。
自分で考えて、そしてアウトプットするとことを、毎日実践していくと、加速度的に自分のものに自然となっていくのだ。
社長であるあなたが、いちいち説教するのではない。
スタッフ一人一人が、自分で納得して改善していくのだ。
この、自分で考え、アウトプットしていく作業こそ、心理学的にみても、会社の価値観を浸透させるための最も有効な手段なのだ。
<クレドを深化・進化させる②>
これまで、いくつかの小さな会社でクレドを導入してきた。
その中で、少しだけわかったことがある。
それは、スタッフに男性が多いのか、また、女性が多いのかで、クレドの内容を少し変化させた方が良いということだ。
●男性の場合
男性に関しては、全員が全員というわけではないのだが、ロジカルに考えたりする癖が強いので、80:20の法則などのように、○○の法則とか、○○の根拠によって裏打ちされた・・・とか、いわゆる左脳的な表現をクレドに入れたとしても、違和感を感じる人は以外と少ない。
●女性の場合
女性の場合はどうなのかというと、直感的な表現を好む人がやはり多い。
具体的な表現でいうと、「私たちは○○を愛します。」、「私たちは○○を大切にします。」などのように、理屈抜きの右脳的な表現が好まれる。
よって、男性と女性の割合によって、表現を工夫した方がよいだろう。
<クレドを深化・進化させる③>
もう一つクレドに入れておいた方が良い項目がある。
それは、スタッフ間どうしで必要だと思われるルールがどの組織にも必ず存在するので、マネージャー同士で話し合わせて必ずクレドに組み込むようにすることだ。
どういう意味かというと、社長がいる時といない時では、やはり雰囲気は違う。
実際、社員間でも必要なルールは必ずある。が、社長にはそれは分からない。
それを、作れるのは現場マネージャーしかいない。
そして、それらを統合して、その企業の価値観を創造していくのだ。
以上のことを踏まえて、クレド作りに情熱を燃やしていただきたい。
クレドは、あくまでも、スタッフ全員の行動の基準を掲げたものだから、なるべく短く、そして直感的にわかるものであればなお良い。
そして、カード程の大きさのクレドカードを作って社員に持ってもらう。
さて、そのクレドカードをいやいやながら持つ組織になるのか。
それとも、他社や友人に「いいだろう~!」と見せびらかしたくなるような組織になるかは、あなた次第だ!