カウンセリングの基本は、相手の話を「聴く」ことといわれています。
これは、相談相手の気持ちを、共感しながら、相談者の在り方を受け止めること、受け入れることになります。
相談相手は、なにも来談したクライアントのことだけではなく、仕事であれば部下や同僚とのやりとり、家族であれば夫婦間でのやりとり、親子間でのやりとり、となります。
相談されるという環境にとらわれなくても、傾聴は、生活している間で起こるすべての人間関係で発揮できる大切なスキルになります。
このような意図を持って相手に接して「聴く」ことを「傾聴する」といいます。
「聴く」ということは、その漢字が表しているとおり、耳で聞くことに+(プラス)して、目で見て、心で観るということだという解釈もできますね。
1、傾聴とは
人と人のコミュニケーションの中でもっとも重要なことは、「聴くこと」であるとされています。
親切心からの助言や励ましが、実は相手の話を遮り、気持ちを十分尊重できない、一方的なものとなり、相手が抵抗や不快感を感じる場合もあります。
逆に、心から耳を傾けてもらえるだけで、自分を振り返り、気持ちを整理し、もともともっている力や可能性を発揮して答えを自力で見出したり、インスピレーションを得たり、発想を広げたりすることがあります。
「聴くこと」は一見単純で、受け身的なことのように思われるかもしれませんが、実は能動的に人と関わる、奥の深い世界です。
カウンセリングやコミュニケーション・スキル、コーチングなどの分野で発達した「傾聴(アクティブ・リスニング)」は、このような「聴く」ための専門技術として、確立されています。
ここでは、効果的に人と関わるために役立つ「傾聴」についてご紹介することで、相手の可能性を引き出す聴き方、あるいは関わり方とはどのようなものかを見ていきましょう!
「傾聴」の基本的な考え方・関わり方
- 答えは本人の中にある。
- こちらが聞きたいことではなく、相手が言いたいことに真剣に耳を傾け、受け止める。
- 相手が話しやすいような聴き方をする。
- 直感を含んだすべての感覚を使い、素直なコミュニケーションを行う。
- 相手の問題点に焦点を合わせるだけでなく、可能性や強みを引き出す。
- 共感する(感情移入する)と共に、客観的な視点を保つ。
- react(反応)よりも、relate(関わる)を心がける。
「傾聴」をしてもらえる利点
- 気持ちを受け止めてもらえた完了感を持てる。
- 自分が大切にされ、価値、ある存在であると感じる。
- 話を聴いてくれる人に対する信頼が生まれる。
- 話を整理し、要点を明確にし、客観的な視点をもつことができる。
- 気持ちを表に出すことで、開放感がある。
- 自分を振り返り、自己表現と成長の機会となる。
- 新しいアイデアやインスピレーションが生まれる。
- 話を聴いてもらえたことで、相手の話やアドバイスも受け入れやすくなる。
「傾聴」のルール
- 自分の枠組みや価値観を押しつけない。善し悪しを決めつけるような言い方をしない。一方的な意見を言ったり、助言をしない。
- 「あなたは~だ、あなたは~すべきだ」よりも、「私はこう思う、こう感じる、私だったら~する、私の場合は~だった」など、自分を主語にして話すよう、心がける。
- 考えを深め、明確にするような質問をする。問題を性急に解決しようとせず、問いを掘り下げていく。
- 話の内容だけでなく、言外に込められた意味や気持ち、願いなども感じ取る(ボディランゲージや顔の表情、声の調子などを含む)。また、自分自身がどのような言外のメッセージを発しているかにも気をつける。(体が相手の方を向いているか、腕組みをしていないかなど)
- 個人的なプライバシーに関し、本人の許可なく他言しない。
傾聴の考え方、利点、ルールなど見てどうですか?
カウンセリングの基本や傾聴は何だか簡単のような気がするのですが、実行するのは実に難しいと思います!
まずカウンセリングに関心がある人は、なんとかして人の役に立とうとする人が多いですよね。
そうなんです。私は、心やコミュニケーション・スキルについて勉強したいと思いました。
相手と会話をしていると、相手を何とか導かなければいけないと焦ってしまい、相手の気持ちを受け入れる以前に、自分の知識や能力で救おうとしてしまいがちです。
相手の気持ちを受け入れることって、予想以上にエネルギーを必要とするような気がしました。
私も相手の話を聴きながら、もうこちらの話す言葉を用意していたりするときがありますよ。「聴く」というスキルも、失敗を数多くして、反省し、改善していくという繰り返しでしか上達しませんよね。
では、傾聴のスキル、傾聴のプロセスを見ていきましょう!
2、傾聴のさまざまなスキル
傾聴のスキルは数多くありますが、ここで実践するスキルを中心にご紹介します。
- あいづち
あいづちを打つことは、相手の話に関心をもっていることを伝えるメッセージ。 - 繰り返し
相手の話す言葉の一部または全部をそのまま繰り返す。そのことにより相手は、話を受け止めてもらっていると感じる。また、自分の言葉を確認し、振り返ることにもなる。
例:話し手「急に方針が変わって、不安な気持ちになったんです。」
聞き手「不安な気持ちになったんですね」 - 要約
相手の話の要点をまとめ、伝える。そのことにより相手は、自分が話した内容を整理・確認できる。 - 共感
相手の立場になって感じ、その気持ちを自然な言葉で伝える。そのことにより、相手は受け入れられていると感じる。
例:「・・・それはショックですね。辛かったでしょう。」 - 促し
相手の話が進みやすいように「促しの接続詞」を使う。この「促しの接続詞」とは、英語の”And”に当たり、「それから?」「それで?」といった言葉が相当する。そのことにより相手の話す意味を促し、話が展開しやすい。
これと対極にあるのが”But”であり、「でも」、「だって」、「そうかな」といった言葉になる。 - 「間」
「間」の感覚は重要で、話し手が自分を見つめ、考えを整理するためにも尊重する必要がある。 - 効果的な質問
〇「オープン・クエスチョン(開かれた質問)」
事実を明確にしたり、さまざまな可能性や視野を広げる質問
When(いつ)? Where(どこで)? Who(誰が)?
What(何を)? How(どのように)?
If(もし~だったら)?
※what howはカウンセリングで特に需要な質問になります。
×「クローズド・クエスチョン(閉じられた質問)」
「はい」、「いいえ」の二者択一で答えられる質問
Why(なぜ)?・・・詰問、問い詰められたように感じることがある。
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3、傾聴のプロセス
- 話を聴く
相手の話をさえぎらず、心から耳を傾ける。
話の内容だけでなく、言外に込められた気持ちを読み取る
↓ - 受け止める
話の善し悪しを決めつけず、深呼吸をして受け止める。
「あなたは~だ、~すべき」と言わない。
↓ - 問いかける
相手の考えを深め、具体的にする「オープン・クエスチョン」。
問い詰めない。質問をする前に、その意図を説明する。
↓ - 返答する
自分を主語にして話す。「自分はこう思う、こう感じる、こういう体験があった、自分だったら~する」など。
4、おさらい:心理カウンセリングにおける傾聴の注意点
心理カウンセリングにおける「傾聴」には、以下の注意点があります。
- 相手に注意を向ける
傾聴を行う際には、相手に注意を向け、自分自身の気持ちや考えを排除することが大切です。 - 積極的に相手に話を促す
相手が話している内容を理解し、相手に対して質問を投げかけることで、相手の気持ちや考えを深く掘り下げることができます。 - 聞き手としての役割を果たす
傾聴には、相手の話を聞くことが重要です。そのため、自分自身の意見やアドバイスを出すことは避けるべきです。 - 相手の感情に寄り添う
相手が話している内容に対して、共感や理解を示すことで、相手の感情に寄り添うことができます。相手が安心して話を続けることができるように、相手に対して理解を示すことが大切です。 - 非言語的なサインに注目する
相手が話している際には、非言語的なサインにも注意を向けることが大切です。たとえば、表情やジェスチャー、視線の向きなどから、相手の感情や思考を理解することができます。 - 機械的な対応を避ける
傾聴を行う際には、相手に対して機械的な対応を避けることが大切です。相手とのコミュニケーションに積極的に参加し、相手が話を続けやすいように配慮することが必要です。
以上が、心理カウンセリングにおける傾聴の注意点のおさらいになります。
5、まとめ
今回の記事では、傾聴についてまとめてみました。
この世の中には、自分の話を聞いて欲しい人が山のようにいます。
でも、聞いてくれる人はほとんどいません。
「聴く」ことがしっかりできると、相談者は安心することができるだけでなく、本来備わっている潜在能力が活性化してきます。
ぜひ、傾聴とそのマインドを習得して、あなたの周りの人、関わる人にカウンセリング・マインドを広めていってください!
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