企業理念と経営者

企業理念と経営者

1 経営のすべては人間

事業は人なり……言いふるされた言葉です。しかし、これほどわかりながら、どうにもならない言葉もありません。企業の盛衰は、マンパワーの優劣によって決まります。

優れた人材とは有名大学卒ではありません。人間としての基本観念を持って、創意工夫、やる気、チャレンジ精神、忍耐力、向上心のある人間です。このようなマンパワーは完成品として労働市場で求めることはできません。

すべて自社で自らの努力で養成、創造するものです。そして、これらの教育は大脳教育やマネジメント教育、OJTではできません。潜在意識教育という意識の教育と訓練によってのみ効果をあげることができます。

意識教育と平行して、マネジメント訓練を同時進行式に行うことが効果的な人づくりのキメ手であります。

2 企業の人づくりは意識統一から

企業の最大の資産は人間資源であります。現代の若者は多様化した、また、乱れた価値観を持って育ちました。学校教育と受験勉強で優れた学力を持っていても、個人がバラバラの心で働いていては、企業の優れた資源とはなりません。

全員に同一の価値観を持たせて、同一方向に動かすことができれば、優れた人間集団となって、大きなパワーが発揮できるでしょう。

企業内の精神教育は道徳、修身教育ともに拒否反応が強くて、手がつけられていません。しかし大自然の法則を教え、ここから意識の世界に入れば無理なく共感を得て、価値観の統一ができます。

3 企業経営の原点

神がつくった人間の肉体を見てみますと、完全無欠な経営が行われています。

生産、流通、循環、廃棄が無理なく自動コントロールされ、昼夜、休むことなく、整然と行われて生命を維持し、成長しております。これは大自然がつくった経営システムのサンプルであります。

企業経営は自然界の中で、人間が人間のために行う以上、大自然の法則を積極的に取り入れて行うことが、繁栄の秘訣であります。

調和、共存、循環、絶対愛、因果、進化の法則は、すべて企業経営のエッセンスであり、秘伝といえるものです。大自然の法則を経営の基本理念として、そこから、

  • この会社は何のためにあるのか
  • 会社の使命と目的は何か
  • 働く人は何のために働くのか
  • 会社が繁栄したら、働く人はどうなるのか

会社と社員が何を目的として、どんな精神でどのように働き、私たちはどうなるのか、など全員がはっきり認識することから始まります。

4 物質時代から精神時代

21世紀への地球は一万年に一度の大転換期を迎えます。物質思考と物質文明が終わり、今、地上には精神文明の夜明けが訪れようとしています。

経営の中では、量より質へ、売上高を誇るより経常利益重視へ、商品も機能中心から、美しさ、楽しさ、歓び、興奮、やすらぎなど精神的な付加価値が求められるようになりました。

安くて良いだけで商品の売れる時代は終わりました。生産技術が進歩して良くて安いのは特徴ではなく、当然のことなのです。現在は新鮮なイメージと感性感覚が商品価値と魅力の大きなウェーとを占めております。

八千円以上の株価をつけたサンリオ社はイメージとそうした感性を売っている会社であります。
しかし、やがてイメージと感覚だけでは、売れなくなるでしょう。

新しい時代の経営のキメテは愛の精神で行動することです。お客様を愛し、取引先を愛し、社員を愛し、会社を愛し、商品を愛する……愛の経営こそが21世紀の精神文明の中で永遠の繁栄と幸福を約束されるでしょう。なぜならば、精神文化の原点は愛だからです。

愛とは、おもいやり、いたわり、親切、調和、信頼、感謝、奉仕、許し、まごころ、安らぎ、幸福をつくり出す源泉であります。

21世紀は人類も政治も経済も、愛の意識を中心の原動力として大きく展開していくでしょう。

経営理念

1 わが社はお客様のためにある

経営とは需要があって、それに供給することによって成立します。初めに消費者があって、次に企業が生まれます。消費者無くして、企業は存在できません。このように会社は消費者のためにあるのであって、経営者や労働者のためにあるのではありません。

経営はお客様に奉仕することから始まります。お客様は奉仕に対して満足料を払われます。それが利益であります。質のよい奉仕には多くの満足料が支払われ、多くの利益が生まれます。利益は会社を成長させ、さらに多くの消費者に良質の奉仕を提供するとともに、働く人の生活を維持する大切な資源であります。

働く人びとの生活と生命は、お客様によって支えられております。この事実に対して、感謝の心を持って、さらによき奉仕に努めることは当然であります。

経営とは、奉仕→満足→利益→感謝の連鎖反応を繰り返しつつ、繁栄と生きがい、幸せを創造するシステムです。

奉仕とは弱い者が強い者に対する卑屈な行為や自己が生きるために心ならず行うものと誤解してはいけません。大自然の絶対愛が示すように、奉仕とは崇高な愛の作業であります。

すべての人は働く人であり、また、消費者でもあります。奉仕する人でもあり、奉仕される人でもあるのです。これが共存の法則です。奉仕する能力を失ったとき、その人の人生は終わりです。

2 わが社は働く者が協力して物心共に豊かさと幸せを創造するところ

企業経営はヒト、モノ、カネを調和して、社会価値を創造する組織です。社会価値とは人間を幸せにするすべてのものをさしています。企業の使命は消費者に奉仕するとともに、そこで働く人の生活を安定させ、物も心もとも豊かな生活を目指して、その資源(利益)を創造することです。

企業は利益とともに繁栄します。利益なき経営は罪悪であります。

利益の想像に一番重要なことは、生産性であります。いくら豊かさを求めても、生産性も枠を超えることはできません。生産性の優れた企業は不況にも強く、競争力に優れ、成長性に富んでいます。

経済生産性の高い国はインフレが無く、物資が豊富で物価が安定し、失業率が低く、国民生活が豊かです。

生産性は利益発生のバロメーターで、資本生産性、商品生産性、労働生産性が大きな柱であります。生産性向上は唯物的な思考のみでは成功しません。奉仕し合い、生かし合う、調和と共存の精神が必要です。

●生産性の基準

  • 資本生産性…………資本回転率=年経常利益÷総資本
  • 商品生産性…………商品回転率=年売上高÷棚卸商品高
  • 労働生産性…………1人1か月の荒利益率
  • 時間生産性…………1か月分の経常利益÷1か月の総労働時間

20世紀の唯物的物質万能の時代は、終わりました。来るべき21世紀は唯物と唯心が調和した新しい世界です。
唯物論イデオロギーで労使の対立と闘争を説いたマルクス理論は過去の歴史的遺物となりつつあります。

3 わが社は人間完成をめざして学習し、練磨する道場

すべての人間は使命と目的を持って生まれてきました。その使命とは自然の法則が示すとおり、共存共栄の精神で相互に奉仕し合い、学習して進歩向上し、万生万物と調和して、平和な環境をつくることです。

それ故に日々の仕事、生活、体験のすべては、人間完成のための学習であります。
人生は終わりのない学習です。

職場で働く目的をサラリーを得るためのみと考えるか、人生の学習のために働くと考えるかによって、その人の人生の未来に大きな格差ができることは事実です。

前者の仕事は辛いもの、苦しいもの、嫌なものとしか受け取れず、疲労するのみで、成長向上はありません。後者は、たとえ失敗や辛い体験も未来の成功の糧として生かすことができ、人生に生きがいと喜びを感じつつ、自己成長するものです。

人生の喜びと楽しさは、勤労の汗と努力の後に味わうべきです。チャレンジする、努力する、苦労する、耐える体験をして、自己練磨するには職場は最も適した人生学習の場所であり、また、精神修養の神聖な道場でもあります。

4 奇跡を呼ぶ言葉

経営理念は会社の教義で宗教の経典、バイブル、コーランにも匹敵すべき経営者と働く人の精神のバックボーンです。毎日朝礼で心を込めて、自己が自己の潜在意識に強くインプットしてください。そして誓いの言葉も必ず、合わせて打ち込むことです。

私たちは誓います。

  • 私たちは心を込めて、お客様に奉仕します。
  • 私たちは物心ともに豊かさと、幸せを創造します。
  • 私たちは人間完成をめざして、学習し、練磨します。

相念は物をつくるといわれています。同じ言葉を心をこめて、繰り返して自己の心に言いきかせると、潜在意識に定着して、想念のエネルギーが現実化するものです。

これをミラクル・ワード(奇跡の言葉)といいます。誓いの言葉が各自の意識に浸透してミラクル・ワードと化したとき、その会社には理想的な人間集団が出現するでしょう。

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この記事は、今から20年以上前に、無料配布されていた小冊子「心のマネジメント 大自然の法則と経営理念 中川昌蔵 著」の本文中から抜粋してお伝えさせていただいております。現在は、書籍「不運より脱出する 運命の法則」として販売されておりますので、興味がある方はアマゾン等からご確認ください。

故)中川先生は、大阪で二部上場された家電販売会社の社長でしたが、原因不明の病気で死を目前にしたとき、本来の使命を思い出され、自分の中に入ってくるメッセージをまとめたそうです。その際、二つの約束をしたそうです。「組織を作らないこと」「金儲けをしないこと」でした。