「もっとよく考えなさい!」 上司からそう言われたとき、あるいは部下に対してそう感じたとき、私たちは具体的に何をすればいいのでしょうか?
実は、「考える」という行為の正体は、自分自身に「質問をすること」に他なりません。 仕事ができる人、コミュニケーション能力が高い人、そしてリーダーシップを発揮する人は、例外なくこの「質問力」を使いこなし、自分と相手の脳を上手にドライブさせています。
この記事では、NLP心理学の視点から、相手の心を開き、望ましい結果へと導くための「一生モノの質問技術」を解説いたします。
1. 思考の正体は「自問自答」である
私たちはトラブルが起きたときや、新しいアイデアが必要なとき、頭の中で無意識に自分へ問いかけています。
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成果が出ない人の質問:「なんで自分はダメなんだ?」「どうしてこんなミスをしたんだ?」
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成果を出す人の質問:「この状況から学べることは何だ?」「次はどうすればうまくいく?」
脳は高性能な検索エンジンと同じです。入力された「質問」に対して、強制的に答えを探し始めるという性質を持っています。 「なぜダメなのか」と問えば、脳はダメな理由(言い訳)を検索します。「どうすればできるか」と問えば、脳は解決策を検索します。
つまり、人生や仕事の質を変えたければ、自分と相手に投げかける「質問の質」を変えるのが最短ルートなのです。
想像してみて欲しい。何か問題が起きたとき、新しいアイデアが欲しいとき、あなたの頭に都合よく、その答えが湧いてきただろうか? 否、答えを導く前には必ず何かしらの質問があったはずです。質問があって、はじめて答えがあり、質問の内容が一人一人違ってくる。さらに、その人の意識の幅、経験値、意識の深さなどによって答えの質も違ってくる。
態度や行動や能力や価値観を変えるよりも前に、自分に対する質問を変えていく方が効果的です。なぜなら、私たち人間に備わっている大脳というスーパーコンピューターが答えを用意してくれるからです。
2. 基礎テクニック:オープン質問とクローズド質問の使い分け
質問には大きく分けて2つの形があります。これらを意識的に使い分けるだけで、会話の主導権を握ることができます。
① クローズドクエスチョン(閉じた質問)
「はい」「いいえ」、あるいは「AかBか」の二択で答えられる質問です。
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メリット: 事実確認が早く、相手に決断を促せる。
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デメリット: 会話が広がりづらく、多用すると「問い詰められている」と感じさせてしまう。
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活用シーン: 会議の最後、意思確認、急ぎの報告。
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例:「この方針で進めても大丈夫ですか?」
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② オープンクエスチョン(開いた質問)
「何(What)」「どのように(How)」など、相手が自由に考えを述べる質問です。
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メリット: 相手の思考を広げ、本音やアイデアを引き出せる。
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デメリット: 相手に考える負荷がかかるため、信頼関係がないと負担に感じられる。
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活用シーン: 企画のブレスト、部下の育成、問題解決の糸口探し。
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例:「このプロジェクトを成功させるには、何が必要だと思いますか?」
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【明日から使えるコツ】 「なぜ(Why)」という言葉は、相手を責めるニュアンスになりやすいため、「何(What)」や「どのように(How)」に変換してみましょう。
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NG:「なぜ遅れたんだ?」
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OK:「予定通りに進めるために、何がハードルになったかな?」
「何(What)」は、 問題を明確にしたり、相手に考えさせるときに使用します。「どのように(How)」は、アイデアを探ったり、可能性を拡げるときに使用します。
3. 応用テクニック:視点を変える「チャンク」の操作
「チャンク(Chunk)」とは、情報の「塊(かたまり)」のことです。質問によってこの塊の大きさを変えることで、相手の視点を自由自在に操れます。
① チャンクアップ(視点を広げる・抽象化する)
目先の細かい問題から離れ、より大きな目的や背景に目を向けさせる技術です。
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質問例:「そもそも、この仕事の目的は何ですか?」「これが実現したら、どんな良いことがありますか?」
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効果: モチベーションの向上、対立している意見の統合、目的の再確認。
② チャンクダウン(視点を具体化する・詳細化する)
抽象的な話を、具体的な行動レベルまで落とし込む技術です。
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質問例:「具体的には、まず何から始めますか?」「その『問題』とは、具体的に誰が、いつ、何をしている状況ですか?」
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効果: 迷いの解消、実行プランの明確化、誤解の防止。
【ビジネスシーンでの活用】 部下が「やる気が出ません」と悩んでいたら、まずはチャンクアップで「本来の目標(目的)」を思い出させ、次にチャンクダウンで「今日できる小さな一歩」を明確にします。
4. 「質問する側」がその場を支配する理由
「話が上手な人が場を支配している」と思われがちですが、実は逆です。場をコントロールしているのは「質問をしている人」です。
テレビ番組を思い浮かべてください。主役はゲストですが、番組の流れを作り、話題の深さを決め、誰にスポットを当てるかを決めているのはMC(司会者)です。
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質問は「スポットライト」と同じ: 質問された相手は、そのことについて考えざるを得ません。あなたが質問を変えるだけで、相手の思考の向きを変えることができるのです。
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マウントを取らずにリードする: 自分の意見を押し付ける(自己主張)と反発を招きますが、適切な質問を投げかけることで、相手に「自ら気づいてもらう」ことができます。これが最も強力なリーダーシップです。
あなたはいつも質問をする側ですか?それとも自己主張する側でしょうか。
もしその場を支配したいのであれば、質問する側に回ることが大切です。質問力が高い人は、適切な質問を通じて相手の考えを引き出し、相手が自己理解を深め、行動を起こすことができますし、質問一つで話の方向性すら変える力を持っていて、そのことを活用しているのです。
5. 明日から実践!「質問力」を高める3ステップ
いきなり全てをこなす必要はありません。まずは以下のステップから始めてみましょう。
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「自分への問い」に気づく: トラブルが起きたとき「最悪だ、どうしよう」ではなく「この状況をプラスに変えるには何ができる?」と自分に問いかけてみる。
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オープン質問を1日3回使う: 「順調?」というクローズド質問を、「今はどんな状況?」「何か手助けできることはある?」というオープン質問に変えてみる。
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「具体的には?」を口癖にする: 相手の話が曖昧なとき、チャンクダウンの質問(「具体的にはどういうこと?」)を使い、認識のズレをなくす。
まとめ
質問力とは、単なる会話のテクニックではなく、「相手の可能性を引き出し、望ましい未来を創り出す力」です。
あなたが発する問い一つで、部下のモチベーションが上がり、会議の空気が変わり、プロジェクトの成果が劇的に改善します。今日から、相手を説得するのではなく、「質の高い質問」を投げかけることから始めてみませんか?
執筆者の視点: この記事はNLP心理学の知見に基づき、現場で働く皆さんが「自分の言葉」として質問を使えるようになることを目指して構成しました。さらに深いコーチング技術については、[こちらの記事(コーチングの基本)]も併せてご覧ください。



