ミルトンモデル 

無意識に影響を与える伝えるスキルといえば「ミルトンモデル」です。天才と呼ばれた催眠療法家のミルトン・エリクソンが活用していた言語・非言語パターンでもあります。解決するのが難しいクライアントであっても、巧みな技術によって現実に適用できるようにします。そんなミルトンモデルを活用することで、相手の心に抵抗なく影響を与えてメッセージを届けることに繋がります。そんなNLP心理学のミルトンモデルについてご紹介します。

1、ミルトンモデルとは

言葉だけで他者に対しての影響力を持つミルトンモデルは、潜在意識に対して変化に長けているので心理療法の場所でも使われているものです。催眠療法家のミルトンモデルは、ミルトン・エリクソンが使う巧みな言葉を研究して分析・体系化して形にしたのです。

例えば、クライアントにとって望ましいと思う変化をもたらす為にセッションをしているイメージをしてみてください。カウンセリングのなかで発言した言葉に対して、クライアントが素直に受け入れることができず、心理的な抵抗が起こることもあります。

その状態ではクライアントが希望している変化をもたらすことには繋がりません。相手に対して無意識のメッセージを与えることによって、クライアント自身が持っている抵抗力を緩め、変化を起こしやすくなるのです。

ミルトンモデルは、さまざまな場面で活用できるスキルになるので、仕事や日常生活のコミュニケーションとしても最適な方法になるのです。相手との会話によって役立つ信念を与えるともいわれているのです。

ちなみに逆の意味の言葉でメタモデル(質問術)があります。効果的な質問を何度も繰り返したり、相手に気付きを与えてその人の持っている信念の幅を広げていきます。

2、ミルトンモデルの具体的な特徴3種

ミルトンモデルは大きく分けて3つの特徴があります。

1. 言語バターン

ミルトンクリストンが活用した言語の使い方をまとめたものです。具体的には「前提」「因果」「引用」などのパターンがあります。

2. 非言語パターン

言語をどんな枠組みで活用していたのか、状態など言葉を使わずにエリクソンが使っていたアプローチの方法です。

3. 考え方の特徴

言葉の使い方や会話の枠組みなどで、エリクソン独自の考え方を持っていました。例えば相手の世界観を尊重するのはもちろんのこと、失敗と言われるものはなくあるのはフィードバックのみだと考えました。

またカウンセリングでは抵抗するクライアントは存在せず、セラピストの柔軟性が足りないだけです。他にも肯定的意図として人はそれぞれ最善を尽くしていること、ネガティブに見えることであっても肯定的な背景があると考えます。

これらの考えは、NLP心理学の前提として考えられているものです。カウンセリングの分野だけでなく、さまざまな分野で応用できるものです。

3、ミルトンモデルのパターンとは

ミルトンモデルにはいくつかのパターンがあります。人生だけでなく、人間関係や仕事関係で役立つパターンになりますので、それぞれの違いを把握しておきましょう。

1. 前提

相手に伝えたいメッセージや会話を、コミュニケーションの中に入れ込みます。相手には無意識のうちにメッセージとして伝えることができるので、余計な抵抗力がなくなります。
「誰に対しての優しいし、いつも笑顔が素敵なひとだね!」という言葉のなかには、「いつも~」と使うことによって「いつも笑顔」と伝えることができます。相手に気付きを生み出しポジティブな影響を与えることができます。

2. 読心術(マインド・リーディング)

あなたの心を読んでいる風の言動で伝えることで、「この人は自分の事をわかっている」と思わせることによって、信用させ、会話を引き出す方法です。どうやってわかったのかは、説明しないままさり気なく言葉に入れるのです。「~かもしれませんね」や「でしょう」などの言い回しをして湾曲します。例えば「あなたのことをどれだけ大切にしているのかを、あなたが一番わかっているのでしょうね」と表現します。

3. 主体の省略

相手の話を否定しづらくなる方法です。あえて主語を入れずにメッセージを伝えることによって、相手にとっては誰がいっているのかわからなくなります。「才能のある方ほど、この話を聞くととてもやる気になるようですよ」と表現します。この言葉を聞くと、才能のある人間になった気持ちになり、実力を伸ばすことができます。

4. 因果関係

相手に伝えたいメッセージに対して、理由をつけることによって相手が受け取りやすくなる方法です。原因と結果を結びつけたような形で伝えます。何かを話すときに「主張」と「根拠」をセットにするだけで、説得力が増すとも言われ行動を促進することになります。

公式的に考えるとX→Yという考え方です。XだからYになる、XにするとYになるなどのXを原因にしてYを結果として表現します。例えばビジネスのプレゼンで、「この企画を実行すれば、会社の売上があがり利益を伸ばすことができる」など。

5. 異なるものの同一視

相手に伝えたいメッセージに対して、理由をつけることによって相手が受け取りやすくなります。意味づけしたこと=伝えたいメッセージといった考え方です。例えば最初にYESが取れるような内容を入れることによって、後に本当に伝えたいことに対してNOと言いにくくなるというものです。例えば「あなたの異動は、会社にとっても必要なことです」

6. 普遍的数量詞

相手に伝えたいことに対して受け入れやすい言葉を入れて話すこと。例えば「いつも」「すべて」「みんな」「本当に」「誰でも」「決してない」「一つもない」などの普遍的な言葉を使うこと。逆説的に制限を与えることによって、すべての可能性を肯定する場合もありますし、否定する場合もあり例外的なものを認めることがありません。

7.  不特定の動詞・名詞

相手に対して抽象的な言葉を使うことによって、自分のこととして物事を捉えることがあります。様々な意味合いにとれる言葉を使い当てはめることができます。「動く」「思う」「変わる」「体験する」など内容が具体的に特定されない動詞です。「なんだか最近きれいになったよね」と伝えるとどこがきれいになったのかはあえて言葉にしていないものの、言われた相手は変化をしたように感じます。

8.  叙法助動詞

相手が否定しづらくなるように、「できます」「可能性があります」といった表現を使います。
叙法助動詞にも2通りのものがあり、可能性の叙法助動詞は無意識のうちに限界を決めてしまいます。必要性の叙法助動詞は「~すべきだ」「~すべきではない」と決めつけてしまうのです。

9.  引用+α引用の延長

第三者などの他者の言葉を使うことによって、否定的な感情を生みにくくします。すると、相手は受け入れやすくなり伝えたいメッセージがより取り込みやすくなります。誰かの言葉に関わらず、格言やことわざなどの物語や著名人を引用しても問題ありません。例えば子どもを褒めるときに「学校の先生が素直で良い子だって褒めてたよ」といってもいいですし、相田みつをの言葉を引用して「名もない草も実をつける いのちいっぱいの花を咲かせて」といったように言葉として伝えます。

10.  否定命令

「~しないでください」「~するべきではない」など相手に伝えたいメッセージを言葉の表現にして、無意識のうちに浸透させていきます。例えば、「まだこの商品は購入しないでください」といったとします。すると、商品を先に購入しようかなと思ってしまいます。こういった言葉の表現を指定命令といいます。

してほしいことを否定して、本当は商品を購入して欲しいという気持ちです。例えば教育面では「トップを目指す必要はないんだよ。本当にトップを目指したいと思ってもいったん忘れるようにしましょう」というと否定命令です。ちょっとした言葉に積み重ねることによって、物事の考え方を変える方法です。

11.  挿入命令

直接命令をして相手に伝えるのではなく、どんな行動を取って欲しいのか同意してほしいのかを得るようにします。例えば、「家に帰っておやつを食べる前に、手を洗って着替えてしまっても問題ないよ」と伝えると、おやつを食べる代わりに手を洗って着替えるように指示を出していることになります。

直接的に言葉にするよりも、遠回しに伝えるだけでも受け入れやすくなり、より効果的にものごとを伝えることになります。ビジネスの場でも「仕事を進めるうえで、不安な点がないかどうかとても気がかりです」というと、相手にとっては安心感を与えることになるので、不安だと思っている点を話しやすくなります。

12.  アナログ・マーキング

非言語を使い、伝えたいメッセージ性を強めたり際立たせることに繋がります。プレゼンテーションの文章における、声のトーンや調子を変更したり、特別な部分やキーワードを際立たせることができます。

アナログ・マーキングは、潜在意識に言葉を届けるのに効果的な方法です。例えば、エリクソンは、「あなたはトランス状態に入るために目を閉じる必要はないことを忘れないように」と伝えるときに目を閉じるをあえて頭を動かしながら強調しました。

13.  ダブルバインド

ダブルバインドは二重拘束の意味があり、選択肢を2つ用意します。相手が自分の意思で決めたように思わせて、本来とって欲しい行動をとってもらう方法をいいます。使い方を間違えるとモラルハラスメントやパワーハラスメントを招きやすくなりますので、注意して使う必要があります。

例えばお客さんと話をしているときに「もし購入するのであれば、お支払い方法はカードと現金どちらでしょうか」と聞くと、購入するのが決まっていないときであっても「購入しようかな」という気持ちになりますね。他にも仕事を依頼するときに「この仕事は今週までにできる?それとも来週までになりそう?」と依頼前提に表現すると来週ではなく、今週に仕上げようとしますよね。

4、まとめ

ミルトンモデルは、言葉を使って人生を変える可能性のあるものです。是非取り入れることによって、相手にとって抵抗感なく受け入れることができます。