NLPで学ぶミルトンモデル④-1:ラポール形成(信頼関係の構築)

ラポール形成(信頼関係の構築)

「治療者の最初の仕事は、クライアントのペースに合わせることである。」

— ミルトン・エリクソン

1. ラポールとは何か?

ラポール(Rapport)とは、催眠療法においてクライアントとの間に築く信頼関係のことを指します。

エリクソン派催眠療法では、クライアントがリラックスし、自分の無意識にアクセスしやすくなるためには、安全で安心できる環境が不可欠です。

そのため、治療者がクライアントと良好な関係を築くことが、催眠誘導や暗示を成功させる基盤となります。

ラポールが形成されると、クライアントは自然と治療者の言葉を受け入れやすくなり、無意識のプロセスがスムーズに働くようになります。

2. ラポール形成の基本原則

エリクソンは、クライアントと深いラポールを築くために、次のような技術を活用しました。

🔹 許容・関心・観察・利用

エリクソンは「すべての反応を治療に利用する」ことを強調しました。

  • 許容:クライアントの言葉や行動を否定せず、受け入れる姿勢を持つ。
  • 関心:クライアントの話を興味を持って聞き、共感を示す。
  • 観察:表情、呼吸、姿勢、声のトーンなどを細かく観察する。
  • 利用:クライアントの反応や状況を、そのまま催眠誘導や暗示に活用する。

→ 例:「あなたが話している間に、少し呼吸がゆっくりになりましたね。それは、リラックスし始めている証拠かもしれません。」

3. ラポールを築く具体的なスキル

① ミラーリング(マッチング)

クライアントの話し方、ジェスチャー、呼吸のリズムなどを自然に合わせることで、潜在的な親しみや安心感を生み出します。

具体例:

  • クライアントがゆっくり話す場合、治療者もゆっくりとしたペースで話す。
  • クライアントが脚を組んで座った場合、さりげなく似た姿勢を取る。

→ クライアントは「この人は自分を理解してくれている」と無意識に感じ、信頼感が増します。

② 言語的マッチング(描写的マッチング)

クライアントの言葉の使い方や感覚表現(視覚・聴覚・体感覚)を合わせる。

具体例:

  • クライアントがゆっくり話す場合、治療者もゆっくりとしたペースで話す。
  • クライアントが脚を組んで座った場合、さりげなく似た姿勢を取る。

→ クライアントは「この人は自分を理解してくれている」と無意識に感じ、信頼感が増します。

③ 許容的で力を与える言葉

クライアントが「今の状況を変えられない」と感じているときに、可能性を示すような言葉を使います。

具体例:

  • 「あなたは、すでにいくつかの解決策を持っているかもしれません。」
  • 「これまでにも、無意識のうちに問題を解決したことがあるのではないでしょうか?」
  • 「あなたのペースで大丈夫です。」

→ 命令や決めつけを避け、クライアントに選択肢を与えることで、安心感を与えます。

4. ラポールを深めるための注意点

  • 焦らない:信頼関係を築くには時間がかかることもあります。クライアントのペースに合わせることが重要です。
  • 評価しない:「あなたの考えは間違っています」といった否定的なフィードバックは、クライアントの防衛反応を生みます。代わりに、「その考え方も興味深いですね」と受け入れる姿勢を持つ。
  • 権威的にならない:催眠療法は「命令する」ものではなく、「導く」もの。エリクソンは、クライアントの無意識の力を信じ、それを引き出すことを大切にしました。

ラポール形成のポイントまとめ

ラポールは、催眠療法の成功を左右する最も重要な要素のひとつです。
エリクソンは、単なる技法ではなく、クライアントに寄り添い、その人の内なる力を引き出すことを何よりも大切にしました。

  • クライアントを受け入れ、関心を持つ(許容・関心・観察・利用)
  • 言葉や動作をさりげなく合わせる(ミラーリング・マッチング)
  • クライアントの言葉を反映し、共感を示す(描写的マッチング)
  • 可能性を広げる言葉を使い、自信を引き出す(許容的で力を与える言葉)

こうしたスキルを実践し、クライアントとの信頼関係を築くことで、催眠の効果を最大限に引き出せるようになります。

ラポールについてはこちらの記事により詳細に記載していますので、ぜひご覧ください↓

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