NLPで学ぶミルトンモデル④-8:未来志向

未来志向:クライアントの可能性を引き出す催眠療法

「あなたが解決策を見つけることは、すでに始まっている。」

— ミルトン・エリクソン

1. 未来志向とは?

エリクソン派催眠療法では、「過去の問題を掘り下げる」のではなく、「クライアントが望む未来に焦点を当てる」アプローチを取ります。これは、**「未来志向」**と呼ばれ、エリクソンの催眠技法の中核となる考え方です。

多くの心理療法では、**「なぜ問題が起こったのか?」**という原因探しが重視されます。
しかし、エリクソンはクライアントに対してこう尋ねました。

「問題が解決したら、どんなふうに感じますか?」

この問いかけは、クライアントの思考を**「過去の原因」から「未来の可能性」へと向けさせる**力を持っています。

未来志向のアプローチでは、次のようなステップを通じて、クライアントの変化を促します。

  • 「問題ではなく、解決に焦点を当てる」
  • 「望む未来のイメージを具体化する」
  • 「すでに持っているリソース(強み)を活用する」
  • 「小さな成功体験を積み重ねる」

2. 未来志向のメリット

  • ✅ 過去にとらわれず、前向きな変化を促す
    → クライアントは問題の原因探しではなく、「解決する力がすでにある」という感覚を持てる。
  • ✅ クライアントのリソース(強み)を引き出す
    → クライアントは、自分の中にある解決能力に気づき、自信を持てる。
  • ✅ 小さな変化を積み重ねることで、大きな変化を生む
    → 「未来に向けてできること」を実践することで、クライアントは自然に成長できる。

3. 未来志向の催眠誘導の流れ

① ラポール形成(信頼関係を築く)

まず、クライアントが安心できる環境を作り、未来について話すことに抵抗を感じないようにします。

✅ 具体例

治療者:「今日は、これからのことについて、ゆっくり考えてみる時間を持ちたいですね。」

👉 「過去ではなく未来に意識を向ける」という前提を作る。

② 望む未来のイメージを具体化する

「もし問題が解決したら、どんな未来が待っているか?」という質問を使い、クライアントが理想の未来を思い描けるように導きます。

✅ 具体例

  • 治療者:「もし、この問題が自然に解決していたとしたら、あなたはどんなふうに感じていますか?」
  • クライアント:「もっと落ち着いて、楽に過ごせていると思います。」
  • 治療者:「そのとき、あなたはどこにいて、何をしているでしょうか?」

👉 クライアントが未来のビジョンを思い描くことで、問題解決後の感覚を先取りできる。

③ 未来の自分にアクセスさせる(未来ペーシング)

クライアントが「未来の自分」を具体的に想像できるように誘導します。

✅ 具体例

  • 治療者:「目を閉じて、少し未来の自分を想像してみましょう。そのとき、あなたはどんな表情をしていますか?どんな服を着ていて、どんな場所にいますか?」
  • クライアント:「穏やかな表情をしていて、リラックスできる場所にいます。」
  • 治療者:「その自分が、あなたに何かアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけてくれるでしょう?」

👉 クライアントは、未来の自分からヒントを得ることで、前向きな変化を受け入れやすくなる。

④ すでに持っているリソース(強み)を活用する

未来のビジョンを持つだけでなく、「それを達成するために、今できること」を引き出します。

✅ 具体例

  • 治療者:「これまでの人生で、何かを乗り越えた経験がありますよね?そのとき、あなたはどんな方法を使いましたか?」
  • クライアント:「友人に相談したり、小さな目標を作ったりしました。」
  • 治療者:「その方法を、今回の状況にどう応用できますか?」

👉 クライアントは、すでに持っている強みを活かして、解決策を見つけやすくなる。

⑤ 小さな成功を積み重ねる

「未来の理想の自分」に近づくために、小さなステップを設定することで、行動を促します。

✅ 具体例

  • 治療者:「今のあなたにできる、小さな一歩は何でしょうか?」
  • クライアント:「毎日、5分だけリラックスする時間を作ってみる。」
  • 治療者:「素晴らしいですね。その一歩を続けることで、あなたの未来はどのように変わると思いますか?」

👉 「小さな行動が、未来の大きな変化につながる」という実感を持たせる。

4. 未来志向を活用した催眠スクリプトの例

「未来のあなたに会う旅」

  1. 目を閉じて、リラックスしながら、心の中でゆっくりと歩き出すイメージを持つ。
  2. 未来の自分に出会う場所へと向かっていることを想像する。
  3. 未来の自分が、あなたを温かく迎えてくれる。
  4. 未来の自分に、「どんなアドバイスをくれますか?」と尋ねる。
  5. 未来の自分の言葉を心に刻みながら、ゆっくりと現在に戻る。

👉 クライアントは、未来の自分の視点から、新しい気づきを得ることができる。

5. まとめ

未来志向の催眠療法は、「過去の問題」よりも「未来の可能性」に意識を向けることで、クライアントが自然に前向きな変化を受け入れられるようにするアプローチです。

✅ 未来志向の催眠誘導のポイント

  • 「問題」ではなく「解決」に焦点を当てる(「問題がなくなったら、どんな気持ちになりますか?」)
  • 望む未来のイメージを具体化する(「未来のあなたは、どこで何をしていますか?」)
  • 未来の自分からアドバイスをもらう(「その未来のあなたが、今のあなたに何を伝えていますか?」)
  • すでに持っているリソースを活用する(「過去の成功体験を、今回の状況にどう活かせますか?」)
  • 小さな成功を積み重ねる(「今できる最初の一歩は何ですか?」)

未来志向の催眠を使うことで、クライアントは自分の未来に希望を持ち、自然と変化を受け入れやすくなります。

まずは、日常の会話の中で「もし◯◯だったら、どんな気持ちになりますか?」と未来志向の質問を試してみましょう!

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