コミュニケーションは、キャッチボールのような活動です。
実際、キャッチボールは一人では成立しませんし、相手がいてこそ、ボールを投げ合い、キャッチし合うことができます。
コミュニケーションも同じように、会話のキャッチボールと捉えることで、相互の意図と同意が重要であることがわかります。
本記事では、コミュニケーションを「会話のキャッチボール」と捉えることで、その重要性を理解し、実践的なスキルを身につけることを目指します。
そのために、まずは基本的なコミュニケーションスキルを学び、さらに効果的な質問の技術や、チャンクアップとチャンクダウンの活用方法を習得します。
これらの要素を組み合わせることで、あなたも会話のキャッチボールを楽しみながら、相手と深いつながりを築くことができるでしょう。
それでは、さっそく「会話のキャッチボール」という意味を紐解いていきましょう。
1、コミュニケーションはキャッチボール
コミュニケーションはキャッチボールです。
キャッチボールの前提は、まず、1対1以上であることです。
コミュニケーションに関しても、1対1のコミュニケーションにあります。
1対1のコミュニケーションを交わす経験を積むことで、コミュニケーションの対するスタンスができあがっていきます。
コミュニケーションがキャッチボールだとすると、まずは相手と正面に向き合うこと、これが始まりです。
そしてボールを投げる。ボールが行って、来て、また行って、また返って来るように、人との交流も、自分も話し、相手も話す。この「話す」と「聞く」の2つの役割をお互いが担うことでコミュニケーションが成り立ちます。
それ以外は一方通行か声は出すがコミュニケーションが双方向になっていないという状態です。
- 自分からはじめようという意図がある
まず、どちらかが、キャッチボールをはじめようという意図を持つ必要があります。コミュニケーションの最初は、コミュニケーションをはじめる人の、内側からの「伝えたい」「関わりをつくりたい」という欲求です。 - 相手との間に会話の同意がある
相手がコミュニケーションを交わす準備ができていないのに、一方的にボールを投げつけて、相手が応じてくれないと非難している人は、少なくありません。つまり、コミュニケーションを交わし続けることに同意していること、これが非常に重要です。 - 相手と向き合う
コミュニケーションを交わすためには、コミュニケーションを交わす相手と向き合わなければなりません。人と向き合うことで、直面するのは、予期せぬ出来事です。どのような場合もボールを投げ返せるように練習を積む必要があります。 - 適切な距離感を持つ
相手との信頼関係の度合いに応じた、微妙な距離間が必要です。遠すぎず近ずきすぎずに、キャッチボールと同様、適度な距離が必要になります。
コミュニケーションを続けるためには、始める意図があり、相手に同意が得られ、会話を続ける同意が存在することが重要ですから、これらの約束事を守ることで、有意義なコミュニケーションが成立します。
2、コミュニケーションの完了と未完了
コミュニケーションは、キャッチボールのように相手とやりとりし、完了することが重要です。
さて、会話のキャッチボールをはじめてみましょう。
まず、AさんがBさんに会話を投げかけます。
それをBさんが受けとり、Aさんに投げ返します。
それをAさんが受けとります。
これで、コミュニケーションが1つ「完了」になります。
つまり、Aさんが投げたボールが、Aさんのところに戻って、コミュニケーションは完了します。
もしも、ボールが戻らなかった場合、それが「未完了」になってしまいます。
完了しないコミュニケーションは未完了となる
- キャッチボールをする際のあまりよくない「間」
・相手の会話が終わるのを持てずに、自分からボールを取りにいってしまう
・相手の答えを自分が先に言ってしまう
・相手に考える時間を与えないくらい自分が主体となって話す
・沈黙をダメなものと判断する
キャッチボールの目的は、キャッチボールそのものにありますので、これでは心地よいと感じる交流は難しいでしょう。 - 受けとめない
人はそれぞれ自分なりの考え方や解釈をしますからまずは最後まで聞きながら、同調できるところ、受けとめられるところ、そうでないところなどを認めて、相手の会話の意図を見つけることが大事です。
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A「調子はどうですか?」
B「まずまずですね」
A「それは良かったです!」
これは完了の会話です。
■
A「顔色が悪いですが、どこか具合でも悪いですか?」
B「今朝から調子が悪くて…」
A「今朝から調子が悪いんですね」
と続ければ、これも完了の会話になります。
■
同意や受け入れがないと、コミュニケーションの未完了が生じることになります。
■
A「調子はどうですか?」
B「あまり、よくないです」
A「そうそう、みんな公園に集まってますからお越しくださいね」
これは未完了の会話です。Bさんが調子の悪いことを受けとってから、次の会話をはじめないと無視されたと受け取ってしまうBさんは消化不良になってしまいます。
■
A「調子はどうですか?」
B「…」(こちらの目も見ず、返事をしたかどうかもわからない)
A「…」
これは未完了の会話です。Bさんが返事をしないことをうけて、次の会話もできないままになっています。勇気をもってもう一度声をかけ直してみるなど、こちらの側だけでも最善を尽くすようにしましょう。 - 返事がない
提案したのになんの返事もない。挨拶したのに反応がない。声をかけたのに返事もない。ボールを投げたのに受けとられない、返ってこない・・・。答えが返ってこないと、そのことについて答えを探すことになります。その状態がまさに「未完了」です。
つまり、未完了とは、そのことがずっと「気がかり」になっている状態です。
未完了はお互いにフラストレーションがたまる原因にもなり、相手のエネルギーを奪います。
コミュニケーションをはじめたら、必ず、完了させる必要があります。
コミュニケーションを完了させる方法
未完了のコミュニケーションを減らすためには、自分自身でキャッチボールを作り出す力を持ち、未完了を宣言し、自分の内側で完了させることが求められます。
コミュニケーションを完了させるための方法は、最終的には相手にまかせず、自分がコミュニケーションのスキルを吸収して、自分から完了できるように技術を磨くのがベストです。
- 自らキャッチボールを作り出す
- 未完了を減らすためのコミュニケーション・スキルを活用する
- 自分の内側で完了宣言する
- コミュニケーションをコントロールできるようになる
コミュニケーションの量と頻度が重要で、キャッチボールのイメージで行う。関係を築くスキルは、自分自身について話す、明らかにする、フィードバックする、質問する、などになります。
3、チャンクアップとチャンクダウンの活用
コミュニケーションの中で、チャンクアップとチャンクダウンは重要な役割を果たします。
コーチングでは、クライアントの視点を変えるためにチャンクアップとチャンクダウンを良く使います。
チャンクアップとチャンクダウンは、物事を大きくしたり、小さくしたりするものです。
- チャンク(chunk)=かたまり
- チャンクダウン(chunk down)=かたまりをほぐす
チャンクダウンは抽象的な情報を具体的な行動レベルまで落とし込むことで、問題の明確化や目標設定が可能になります。つまり、「どのようにしてそれを行うのか、具体的に教えて?」ということになります。
例)
・この問題点を細分化するとしたら、どういう課題が浮き彫りになりますか?
・誰が、何を、いつまでに、どのように実行しますか?
・最も優先度が高い課題はどれになりますか、その理由と根拠も教えてください
- チャンクアップ(chunk up)=かたまりをつくる
チャンクアップは抽象的な情報を作り出し、方向性や雰囲気を伝えることができます。つまり、「なぜそれを行うのか、その必要性は何?」の確認のために用います。
例)
・このプロジェクトを行う目的と、そのときの理念は何ですか?
・そこから得られるものは何になりますか?
・つまり、どういう状態になっていればそれは成功したといえるのですか?
チャンクアップとチャンクダウンは、コミュニケーションのキャッチボールの中で重要な役割を果たす技術です。
経営者やリーダーは、適切なタイミングでチャンクアップとチャンクダウンを使い分け、チームや組織のコミュニケーションを円滑に進めることが求められます。
意識的にこの技術を取り入れることで、組織の目標達成やプロジェクトの成功に繋がります。
4、まとめ
本記事では、効果的なコミュニケーションを実現するための方法として、1対1の関係を築く要素、価値ある会話の役割分担、コミュニケーションの完了について、クライアントとのコミュニケーションで聞き取るステップについて、そして、チャンクアップとチャンクダウンの活用法を紹介してきました。
コミュニケーションは、会話のキャッチボールのように相互の意図と同意が重要であり、効果的なコミュニケーションを実現することで、より良い人間関係や組織の成功に繋がります。
本記事でご紹介した方法や技術を実践し、自身のコミュニケーションスキルを向上させることで、ビジネスやプライベートの両面での成果を実現できることでしょう。