相手との信頼関係を築くうえで、ラボールはとても重要なものです。
実際、ラポールが上手い人たちやカウンセラーなどの人たちは、どのような流れで相手とのコミュニケーションを進めているのでしょうか。
- まず、ゴール地点、解決したい問題・課題などの「テーマ」を決めます。
- そして、相手との呼吸を合わせたり、おうむ返し(バックトラッキング)をしながら、信頼関係を築いていきます。
「この人は私のことをわかってくれている」と感じさせます。 - 信頼関係の深度、ラポールの度合いに応じて、相手を変容するためのプロセスを実施していきます。このプロセスを「リーディング」といいます。
ラボールを通して心地よい人間関係を築きながら、相手に変化を起こすためのプロセスについて説明します。信頼関係を築くスキルは以下の記事をご覧ください↓
1、相手に変化を起こすためにラポールが必要な理由
このラポールは、人間関係を築いていくための基本となるもので、ラポールの形成がうまくできていないと、どのようなテクニックも通じにくくなります。
例えば…
「あの人が言っているのだから素直に従おう!」
「あの人からはあれこれ言われたくもない…」
相手を信頼しているかどうかで、このようにモチベーションに大きく影響を与えます。
これは、クライアントであっても、家族であっても、上司部下の関係であっても、友人関係でも、同じことです。
エリクソンを観察してわかったこと、それはラポールに50%を費やす
NLP心理学を創設した人たちは、世界中に天才がいると聞けばどこへでも駆け付けていきました。
そして、24時間、彼らに張り付いて具に観察をしていったのです。
「言葉一つで病気を治す人がいる」と聞けばそこへ行き、「なぜ治せるのか、どう患者と関わっていて、具体的にどのようなスキルを使って治しているのか…」など、さまざまな角度から観察と分析を繰り返していきました。
その観察の対象となった一人に、ミルトン・エリクソンという催眠療法家として知られる精神科医がいました。
彼の信条は、「治療に抵抗するクライエントなどいない。柔軟性にかけるセラピストがいるだけだ」というもので、利用できる物はなんでも利用しながら、臨機応変・変化自在に治療を施していったそうです。
その根本にあったのは、「催眠療法はコミュニケーションの1つだ」という考え方でした。
催眠誘導を非常に巧みに行い、普通の会話と催眠誘導の境界を曖昧にすることで、普通の会話の中で自由に催眠誘導と行なったようです。
このようなミルトン・エリクソンの治療モデルを、分解・再整理して第三者でも活用できるようにしたものが「信頼関係を築く」というスキルだといわれています。
ミルトン・エリクソンは、患者との関わりの中で、信頼関係を築くための「ペーシング」に、おおよそ50%のエネルギーを費やしていたといわれています。
このように、ラポールを築いておかなければ、患者に対して変化を促すことができないということです。
何千人も治療を行い、成果を挙げていった中で分かった凄いノウハウです。
治療技術の前にラポールがあること、このことが最も大切だということです。
ですから、心理カウンセリング、コーチングであれば、まず最初に信頼関係を築く(ラポール)テクニックを習うのです。
1:1.6:(1.6)二乗 の法則
「1:1.6:(1.6)二乗 の法則」・・・これは生産性の法則と呼ばれています。
通常の生産性を1とする場合、指示をされたときに自分が納得している場合や信頼される人からの指示であった場合、生産性は1.6倍に上がるといわれています。
さらに、それが自分でやろうと決意したとき、自発性が加わった場合、生産性は二乗作用になり、2.56倍まで上がるといわれています。
逆に、信頼していない人からの指示の場合や、自分が納得できていない時の生産性は、0.9、0.8、0.7…のように下がっていきます。
信頼する、されるということは大変重要な要素になるようです。
2、ラボールで深い信頼関係を築くためのプロセスとは?
ラポールを使って相手との深い信頼関係を築くためにも、正しい手順によって進める必要があります。もちろん相手によっては思った通りの手順で進まないケースもあります。あくまでもプロセスの一例として把握しておくことが大切です。
1. ゴール(アウトカム)設定
- コーチング的な要素が強いものであれば、クライアントが達成したい成果を「ゴール設定」します。
- カウンセリング的な要素が強いものであれば、問題・解決の追究、解決の糸口を見つける、などを「ゴール設定」にします。
相手とコミュニケーションは限られた時間のなかで行うものなので、ゴールを設定することによって、どの程度関係性を進めたいのかを明確にできるようになります。
また、そのうえで相手を観察することも大切です。
人間は相手に対しての気持ちや心理状態は表情や話し方に表れるといわれています。
相手がどのように話をしているのかも観察しておくと、言葉にはならない非言語のなかで情報を引き出すこともできます。
2. ペーシング
心理学の天才たちが生み出したNLP心理学の中でも代表的なページングは、考え方の基盤となるスキルです。
名前からもわかるようにペースやテンポを合わせることになりますが、そのためには相手の話をよく聴くことその上で感の良い反応が必要になります。
人間は自分と共通点がある人に対して心を開きやすく、親しみを感じやすいと言われています。
お互いの関係が良好なものにするためには、同じ動作をする傾向が高まります。
具体的には「ミラーリング」「マッチング」「バックトラッキング」を使って、お互いの距離を縮めていく必要があります。
- ミラーリングは、相手のしぐさや姿勢などを鏡に写すように真似ることです。
- マッチングは、相手の声の出し方や話し方に関するペーシングのことです。
- バックトラッキングは会話をすすめるための聴き方であるオウム返しです。相手の考え方・価値観・感情・呼吸を合わせることができるとラポール形成ができます。
ラポール形成ができると、深いところで無意識のうちに信頼関係ができ相互の影響力が反映し合うような密なつながりを形成できます。
3. リーディング
リーディングとは、あなたが目的としている方向に話を導いていくいくことです。
相手との関係でラボールの形成ができてはじめて、リーディングに取り掛かれます。
目安として形成が正常にできていれば、あなたが動いた行動や仕草を無意識のうちに相手も真似るようになります。
クライアントと決めたゴール設定に向かうために、下図の②~⑤までを繰り返し行っていきます。
3、ラポールを形成する為の注意点
ラポールを築く方法を紹介しましたが万人に共通するものではなく、人によっても全く同じ対応をしても同じ結果にはなりません。
テクニックについてはほとんどの人に使えますが、手順どおりに進まないときもありますし、その相手とのラポールをどうやって形成するべきかを考える必要があります。
ちなみに相手を分けて考えるときに、大きく分けて3つのタイプに考えることができます。
「視覚系」「聴覚系」「触覚系」のいずれかに集中する傾向にあり、相手の感覚にダイレクトに伝えることでラポールを形成できる場合もあります。
相手のことを深く知ろうとする意志をもつことではじめてラボールができるのだと思います。
4、まとめ
信頼関係を築くラボールは、人間関係を円滑に進めるためにも大切な考え方です。仕事でもそうですし私生活でも重要なことで気持ちよく生活もできます。相手に心を開いてもらうことでラポール形成ができるはずですよ。