人間関係において問題が生じることは誰にでもあります。
しかし、それが長期化するとストレスや不満を引き起こすことがあります。
ここでは、アドラー心理学を使って、家族、友人、恋人、職場などの人間関係の改善方法について、具体的には、自己肯定感の向上や相手の立場に立って考えるなどの方法を紹介します。
ドラー心理学を用いた人間関係の改善方法を知って、実践できるように、また、より良い人間関係を築くことができるヒントになれば幸いです。
アドラー心理学は人間関係に役に立つ理由
アドラー心理学では、人間は社会的存在であるため、人間関係に焦点を当てています。
人は他人との関係性の中で生きており、自分の存在価値を他人からの評価で決めていると考えます。
アドラー心理学によれば、人間は幼少期に自分が置かれている環境によって自己肯定感を形成します。
例えば、批判的な親に育てられた子供は、自分に自信を持てずに自己肯定感が低くなりがちですが、自己肯定感を高めることで、自己評価や人間関係が改善されると考えられています。
アドラー心理学の考え方を活用することで、人間関係を改善することができます。
例えば、相手の気持ちや立場を理解し、共感することで相手との信頼関係を築くことができますし、自己肯定感を高めることで、自分自身との関係もよくなります。
つまり、自分の強みや長所など、己を知るからこそ、次の一歩がわかるのです。
自分自身に対してポジティブになることもその一つといえます。
具体的には、以下のようなアドラー心理学の考え方を取り入れてみることができます。
- 相手を批判するのではなく、共感し理解することで、信頼関係を築くことができる。
- 自己肯定感を高めるために、毎日自分自身に対してポジティブなアファメーションを言う。
- 自分自身の強みや長所を知り、それにフォーカスすることで自己肯定感を高める。
アドラー心理学の考え方を活用することで、人間関係を改善することができます。
自分自身に対しても他人に対しても、共感し理解することで、より良い関係を築くことができます。また、自己肯定感を高めることで、自分自身との関係も改善されます。
1、家族関係の改善方法
家族関係は、人生において最も重要なものの一つですが、時には課題や問題が生じることもあります。アドラー心理学では、家族関係の改善に向けて、以下のようなアプローチがあります。
① 相手の立場に立って考える(人間関係改善の共通項)
アドラー心理学では、「共同体感覚」という概念が重要視されており、相手の立場に立って物事を考えることで、家族のメンバーが協力し合えるという考え方です。
たとえば、自分が家族の中で問題を抱えている場合には、相手の立場に立って自分自身を客観的に見つめ直すことで、家族とのコミュニケーションを改善することができます。
② 目標を共有する
家族の中で、それぞれが個別に目標を持っている場合がありますが、それらの目標が家族全体の幸せにつながっているかを確認することが必要です。
アドラー心理学では、「目的意識」という概念があり、家族全体で共有する目標や理念を持つことで、家族の絆を深めるという考え方です。
たとえば、家族全員で食事の準備や片付けをすることで、家族の共同体感覚を高めることができます。
③ 会話の質を向上させる
家族のコミュニケーションが円滑でない場合には、会話の質を向上させることが必要です。
アドラー心理学では、「受容的コミュニケーション」という概念があり、相手の話に耳を傾け、その気持ちを受け止めることで、家族のコミュニケーションを改善するという考え方です。
たとえば、家族の中で争いが生じた場合には、自分自身の気持ちだけでなく、相手の気持ちにも配慮することで、問題解決のヒントが得られるかもしれません。
④ 改善のために必要な時間と努力
家族が一つになって、お互いに協力し合い、寛容である必要がありますので、まずはお互いの立場や気持ちを理解することが大切です。
例えば、家族で話し合いをする場合は、全員が平等に発言できるようにしたり、相手の意見をしっかり聞くようにしたりすることで、お互いが理解し合えるようになります。
また、家族で一緒に過ごす時間を増やすことも大切です。
例えば、週に一度、家族でお互いの近況を報告しあったり、一緒に料理をしたり、外出したりすることで、家族との絆を深めることができます。
※以上のように、アドラー心理学のアプローチを取り入れることで、家族関係を改善することができます。
2、友人関係の改善方法
友人関係では、以下のようなアドラー心理学のアプローチが役立ちます。
① 自分自身を知ること
自分自身を知ることは、友人関係を深める上で非常に重要です。
アドラー心理学では、「自己分析」という概念があり、自分自身の性格や価値観を客観的に把握し、自己理解を深めることで、友人とのコミュニケーションを改善することができます。
② 相手の立場に立って考える(人間関係改善の共通項)
友人関係においては、相手の気持ちや立場を理解することが重要です。
アドラー心理学では、「共同体感覚」という概念があり、相手の立場に立って物事を考え、相手と協力し合うことで、友情を深めるという考え方です。
たとえば、相手が悩みを抱えている場合には、相手の気持ちに寄り添い、共感することで、友情を深めることができます。
③ 信頼関係を築くこと
友人関係においては、信頼関係を築くことが大切です。
アドラー心理学では、「信頼感覚」という概念があり、言葉や行動を通じて相手に信頼感を与えることで、友情を深めるという考え方です。
たとえば、約束を守ることや、相手の秘密を守ることで、信頼関係を築くことができます。
④ コミュニケーションを大切にする
友人関係においても、コミュニケーションが円滑であることが重要です。
アドラー心理学では、「受容的コミュニケーション」という概念があり、相手の話に耳を傾け、相手の気持ちや意見を尊重することで、友情を深めるという考え方です。
例えば、友人と話すときには、相手の話に興味を持ち、積極的に反応することで、友情をより深めることができます。
※これらの方法を実践することで、友人関係を改善することができます。ただし、友人関係は双方向の関係であるため、相手とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。
3、恋愛関係の改善方法
恋愛関係は、人間関係の中でも特に深い絆であり、同時に摩擦が生じることもあります。アドラー心理学では、恋愛関係の改善に向けて、以下のようなアプローチがあります。
① 自分自身を受け入れる
アドラー心理学では、「自己受容」という概念が重要視され、自分自身を受け入れることで、自信を持って相手と向き合うことができるという考え方です。
たとえば、自分自身に自信が持てない場合には、自分の弱点を受け入れ、それを克服するために努力することで、自己受容を高めることができます。
② 相手を理解する(人間関係改善の共通項)
恋愛関係においては、相手を理解することが重要です。
アドラー心理学では、「相手理解」という概念があり、相手の背景や経験、価値観などを理解することで、相手との関係を改善するという考え方です。
たとえば、相手の悩みを聞き、共感することで、相手との絆を深めることができます。
③ コミュニケーションの改善
恋愛関係においては、コミュニケーションが円滑でない場合があります。
アドラー心理学では、「積極的コミュニケーション」という概念があり、自分自身から積極的にコミュニケーションを取ることで、相手との関係を改善するという考え方です。
たとえば、相手に自分自身の気持ちを正直に伝え、相手の反応を受け止めることで、より良いコミュニケーションが生まれるかもしれません。
4、職場の人間関係の改善方法
職場の人間関係は、日々の仕事に影響を与えるだけでなく、働き方や生活に大きな影響を与えることがあります。
アドラー心理学では、職場の人間関係を改善するためのアプローチがあります。
① 共同体感覚を持つ
アドラー心理学では、「共同体感覚」という概念が重要視されます。
職場のメンバーがお互いに協力し合えるようになることで、チームワークが向上し、職場の雰囲気が良くなるという考え方です。
たとえば、職場でのプロジェクトや課題に取り組むときには、メンバー間での情報共有や意見交換を積極的に行い、チーム全体の目標を達成することを意識することが大切です。
LINEなどのチャットツールを使った情報共有:業務で必要な情報や進捗状況をメールやチャットツールを使って共有することで、メンバー間での情報共有を効率的に行うことができます。
プロジェクト管理ツールの活用:プロジェクト管理ツールを使って、タスクやスケジュールの共有や進捗状況の確認を行うことができます。これにより、チーム全体での情報共有を効率化することができます。
オンラインミーティングの開催:定期的にミーティングを開催し、メンバーがお互いに情報を共有し合うことで、情報の把握や理解を深めることができます。
以上のような手段を使って、メンバー間での情報共有を行うことで、チーム全体の生産性や効率性を向上させることができます。
② 目的意識を持つ
職場のメンバーが個別に目標を持っている場合がありますが、それらの目標が職場全体の目標につながっているかを確認することが必要です。
アドラー心理学では、「目的意識」という概念があります。
職場全体で共有する目標や理念を持つことで、チームワークが向上し、職場の絆を深めるという考え方です。
たとえば、職場での業務に取り組むときには、それが自分自身やチーム全体の成長につながることを意識することが大切です。
メンバー間での情報共有で、うまくいくケース:
- 目標や理念が具体的で明確な場合
- 目標や理念がメンバー全員が共感しやすいものである場合
- 目標や理念が行動指針に直結しており、業務に取り組む上での指針として活用できる場合
- 目標や理念が上司やリーダーから強制的に押し付けられるのではなく、メンバー自身が共有する必要性を感じている場合
一方、うまくいかないケース:
- 目標や理念が抽象的で漠然としている場合
- 目標や理念がメンバー全員が共感しにくいものである場合
- 目標や理念が行動指針に直結していない場合
- 目標や理念が上司やリーダーから強制的に押し付けられている場合
うまくいくケースでは、従業員たちが目標や理念に対して共感し、自分たちの目的として受け入れられるようになります。一方、うまくいかないケースでは、従業員たちが目標や理念に対して共感できないため、取り組みが難しくなってしまいます。
③ コミュニケーションを改善する
職場でのコミュニケーションが円滑でない場合には、コミュニケーションの質を向上させることが必要です。
アドラー心理学では、「受容的コミュニケーション」という概念があり、相手の話に耳を傾け、その気持ちを受け止めることで、職場のコミュニケーションを改善するという考え方です。
たとえば、職場での意見の相違が生じた場合には、自分自身の気持ちだけでなく、相手の気持ちにも配慮することで、問題解決のヒントが得られるかもしれません。
相手の話に耳を傾け、その気持ちを受け止めることは、職場の人間関係を改善する上で非常に重要です。そのためには、以下のような方法が有効です。
チームメンバーが先生になってプチ研修を行る:メンバーの誰かが交代で、他のメンバーを教える研修があれば、チームメンバー全員が同じ知識やスキルを身に付けることができ、お互いに理解しやすくなります。
チームミーティングでの振る舞いをルール化する:チームミーティングなどの場で、相手の話に耳を傾け、その気持ちを受け止めることをルール化することで、継続的にマインドを浸透させることができます。
相手の立場に立った話し方をする:職場でのコミュニケーションでは、相手の立場に立って話すことが重要です。相手がどのような気持ちで話しているのかを理解し、適切な言葉で応えることが大切です。
フィードバックを積極的に行う:職場では、お互いにフィードバックを行うことが大切です。相手が話している内容を理解した上で、適切なフィードバックを行うことで、お互いに成長することができます。
5、自己肯定感の向上方法
自己肯定感は、人間関係や仕事など、あらゆる場面で重要な役割を果たしますから、アドラー心理学では、自己肯定感を向上させるために、以下のようなアプローチがあります。
① 自分自身を肯定する
アドラー心理学では、「自己肯定感」という概念があり、自分自身を受け入れ、自分の選択を尊重することが重要であるという考え方です。
たとえば、自分が得意なことを自分で認め、自分自身を褒めることで、自己肯定感を向上させることができます。
② 過去の失敗や失敗した経験を振り返る
過去の失敗や失敗した経験を振り返ることで、自分自身を受け入れることができます。アドラー心理学では、「生き方の問題を解決するために過去を見る」という概念があります。
たとえば、自分が失敗した経験を振り返り、その原因を分析することで、今後同じ失敗を繰り返さないようにすることができます。
③ 自分自身に対して妥協を許す
完璧主義的な考え方は、自己肯定感を低下させる原因になりますから、アドラー心理学では「妥協する」という概念が重要視されます。
たとえば、自分が完璧主義的な考え方に陥っている場合には、自分自身に対して妥協することで、自己肯定感を向上させることができます。
④ 自分自身を客観的に見つめ直す
アドラー心理学では、「客観的な視点」という概念が重要視され、自分自身を客観的に見つめ直すことで、自己肯定感を向上させるという考え方です。
たとえば、自分自身に対して過度な期待をしている場合には、自分自身を客観的に見つめ直すことで、現実的な目標を設定することができます。
6、相手を理解するための方法
相手を理解することは、良好な人間関係を築く上で非常に重要なスキルです。以下では、アドラー心理学の視点から、相手を理解するための方法を具体的に紹介します。
① 共感することで相手の気持ちに寄り添う
共感することは、相手の気持ちを理解するために必要なスキルです。
アドラー心理学では、「受容的コミュニケーション」という概念があります。
これは、相手の話に耳を傾け、その気持ちを受け止めることで、相手の気持ちに共感することができます。
たとえば、相手が失敗したときに、「悔しいでしょうね。でも、次に向けて頑張ってみましょう」というように、共感の言葉をかけることができます。
② 相手の立場に立って物事を考える
アドラー心理学では、「共同体感覚」という概念が重要視されます。
これは、相手の立場に立って物事を考えることで、相手の気持ちを理解することができます。
たとえば、相手が怒っているときには、その原因を自分の立場ではなく相手の立場から考えることで、相手の気持ちを理解することができます。
③ 相手の言動から気持ちを読み取る
相手の言動から気持ちを読み取ることは、相手を理解するために重要なスキルです。
たとえば、相手が無口であったり、不機嫌そうであったりする場合には、何かしらの問題があるのかもしれません。そんなときには、相手に直接聞くことができなくても、相手の気持ちを推測することができます。
相手を理解するためには、相手に興味を持ち、共感することが重要です。アドラー心理学の視点から、相手を理解するための方法を実践することで、人間関係の改善につながるでしょう。
7、問題解決のためのアドラー心理学のアプローチ
アドラー心理学は、問題解決に向けたアプローチを提供しています。ここでは、アドラー心理学を活用した問題解決の手順を紹介しましょう。
① 問題を明確にする
問題を解決するためには、まず問題を明確にすることが必要です。
問題定義とは、問題の原因や影響を明確にし、具体的に認識することです。
たとえば、「ストレスが原因で仕事がはかどらない」という問題があった場合、ストレスの原因や影響を具体的に考えて問題を明確にしましょう。
② 解決策を考える
問題を明確にしたら、次に解決策を考えます。
アドラー心理学では、「問題解決のための仮説作り」という手法があり、仮説を立てて解決策を考えることで、より具体的な解決策が見えてくるということです。
たとえば、ストレスの原因が仕事の過剰な負荷であった場合、仕事の負荷を減らすための解決策を考えることができます。
③ 解決策を実行する
解決策を考えたら、次に実行に移すことが必要です。
アドラー心理学では、「実行計画」という概念があり、解決策を実行するために必要なステップを明確にし、計画的に実行することです。
たとえば、仕事の負荷を減らすためには、どの業務を優先するか、どのように削減するかなど、具体的な実行計画を立てて実行することが必要です。
以上の手順を踏むことで、アドラー心理学を活用した問題解決が可能です。ただし、解決策がうまくいかなかった場合には、再び問題定義からやり直すことも必要です。
まとめ
本記事では、アドラー心理学を活用した人間関係の改善方法を紹介しました。
家族、友人、恋愛、職場など、さまざまなシーンで役立つアドラー心理学のアプローチを具体例を挙げながら説明してきました。
アドラー心理学は、自分自身と他者を理解するための価値ある知識であり、人間関係の改善に役立つことを示しました。
自分自身を客観的に見つめ、相手の立場に立って考えることが、より良い人間関係を築くための鍵であることを忘れずに実践していただきたいと思います。
参考資料:
- アルフレッド・アドラー著
『個性の創造』(1927)、『アドラー心理学』(1929)、『社会感覚教育』(1933)、『自己信頼の心理学』(1942) - Adler, A. (1927). The Practice and Theory of Individual Psychology. Harcourt, Brace & Company.
Mosak, H. H., & Maniacci, M. P. (1999). A primer of Adlerian psychology: The analytic-behavioral-cognitive psychology of Alfred Adler. Psychology Press. - Carlson, J., & Englar-Carlson, M. (2017). Adlerian therapy: Theory and practice. American Psychological Association.
- Sharf, R. S. (2015). Theories of psychotherapy and counseling: Concepts and cases. Cengage Learning.