アドラー心理学での人間の欲求や動機づけについて

アドラー心理学では、人間の欲求や動機づけを理解することが重要視されています。

この記事では、アドラー心理学の観点から、人間が何を求め、何に動機づけられるのかを人間の欲求や動機づけについての4つの項目として、「社会性」「社会性」「権力欲」「承認欲求」を解説していきます。

この記事を読むことで、人間の欲求や動機づけに関する理解が深まります。また、実践的なスキルや技術を身につけ、自己成長や他者との関係性の改善に役立ていただければ幸いです。

1、目的意識

アドラー心理学において、目的意識は非常に重要な概念の一つです。

目的意識とは、自分自身が何をしたいのか、どのような目標を持っているのかを意識することを指し、人間の行動や思考は目的意識によって動かされているとされています。

具体的には、目的意識は人間の欲求を生み出し、その欲求が人間を行動に駆り立てます。

例えば、学校で勉強をすることは、将来的に自分の社会的地位を高めるための手段となります。また、仕事で頑張ることは、自分の能力を高め、報酬を得ることで生活水準を上げるための手段となります。

アドラー心理学では、人間は常に目的意識を持っているとされていますから、仕事上でも、子育てであっても、カウンセリングやコーチング的な対応をする場合は、目的意識を明確にすることは非常に重要とされています。

目的意識を明確にするメリット

  • 行動の方向性が明確になる
    目的意識を持っていると、何をするべきかが明確になります。例えば、留学を目的に英語の勉強を始めた場合、勉強の目的が明確になるため、目標に向かって努力することができます。
  • モチベーションが向上する
    目的意識を持っていると、それに向かって努力することができます。目標を達成することで達成感や充実感を得ることができ、モチベーションが向上します。
  • 自己実現が促進される
    自分が達成したいことを目的意識として持っていると、自分自身の可能性に気付くことができます。自己実現のために努力することで、自分自身の成長を促すことができます。

例えば、目的意識を持っている人は、何かを学ぶ場合にも自分がその知識やスキルをどのように使うか、何に役立てるかを意識して学ぶことができます。

また、仕事でも自分が何をしたいのか、何を目指しているのかを明確にすることで、業務内容やキャリアアップの方向性を見出すことができます。

このように、目的意識を持つことで自己実現やモチベーションの向上など様々なメリットがあります。

2、社会性

アドラー心理学では、人間の欲求の1つに「社会性」があります。

社会性とは、人間が社会的な存在であることから生じる欲求で、他人との関係性や共感、協力などが含まれます。

アドラー心理学では、人間は本来的に社会的存在であり、他人との関係性や共感、協力を通じて自己実現を果たすと考えています。

そのため、社会性は人間にとって重要な欲求であり、他人との関係性やコミュニケーションの取り方によって、人生の質が大きく変わってくるとされています。

また、社会性を満たすことで、自分が社会に貢献していると感じることができ、自己肯定感を高めることができます。一方で、社会性を満たせない場合は、孤立感や無力感を感じることがあります。

例えば、仕事や学校でのチームワークやグループワークにおいて、自分が周囲と協力して課題を達成することで、自分自身の成長や貢献感を感じることができます。

また、友人や家族とのコミュニケーションを通じて、相手の気持ちや立場を理解することで、共感や信頼を深めることができます。

しかし、社会性に関する欲求が強すぎると、他人と比較して自己評価が低くなったり、自分自身を犠牲にして他人のためだけに生きるようになったりすることがあります。

そのため、社会性を満たすことと自己実現を両立させることが大切であるとされています。

社会性を明確にするメリット

  • コミュニケーション能力の向上
    社会性を意識することで、他者とのコミュニケーションが円滑になります。自分の意見や考えを適切な言葉で表現できるようになり、相手の意見を理解しやすくなります。

    例えば、学校や職場でのプレゼンテーションや報告などで、聴衆との適切なコミュニケーションを取ることが求められます。社会性を意識することで、自分が伝えたいことを相手に伝えやすくなり、相手に受け入れられやすいプレゼンテーションや報告を行うことができます。

  • ソーシャルスキルの向上
    社会性を意識することで、人との関わり方が改善されます。相手に興味を持ち、適切な距離感を保ち、協力的な態度を示すことで、より良い人間関係を築くことができます。

    例えば、学校や職場でのチーム活動では、他のメンバーと協力して目標を達成する必要があります。社会性を意識することで、自分の意見を尊重しながら他のメンバーと協力し、円滑なプロジェクト進行を図ることができます。

  • 自己理解の深化
    社会性を意識することで、自分自身の社会的な役割や責任を理解することができます。自分がどのような役割を担い、どのような行動をとることが求められているかを理解することで、自分自身の価値観や目標を明確化することができます。

    例えば、職場での社会性を意識することで、自分自身がどのような役割を担い、どのような行動をとることが求められているかを理解することができます。その結果、自分自身のキャリアプランを明確化し、目標達成に向けて行動することができます。

3、権力欲求

アドラー心理学における権力欲求とは、自分自身や他者を支配することに価値を見出す欲求のことを指します。

権力欲は、支配することで自分自身を重要な存在と感じることができるという心理的な報酬を得ることができるため、強い欲求として働くことがあります。

しかし、アドラー心理学では、権力欲が個人の幸福感や社会的利益につながるとは考えていません。

むしろ、権力欲が強すぎると他者との関係性を損ねることや、自分自身が本来持っている才能や能力を発揮する機会を失うことがあるため、適度なバランスが必要だとされています。

例えば、仕事で権力を持つ立場にいる人がいる場合、周囲の人々を支配することで自分自身を重要な存在と感じることができます。

しかし、権力を誇示することでチームワークが崩れたり、信頼関係が損なわれたりすることがあるため、自己中心的な行動に走らないように気をつける必要があります。

また、権力欲が強い人は、他者を上手くコントロールすることで、自分自身の不安や劣等感を補うことができると考える傾向があります。

しかし、そのような行動が原因で、周囲の人々に嫌われたり、孤立してしまったりすることがあるため、自分自身の欲求だけに目を向けるのではなく、周囲の人々のニーズや目的にも目を向けることが大切です。

権力欲を明確にするメリット

  • 目標を達成するための決断力やリーダーシップの向上
    権力欲がある人は、目標達成のために積極的に取り組み、自分自身や周囲の人をリードする力を持っています。そのため、権力欲が明確になることで、決断力やリーダーシップの向上に繋がる場合があります。
  • 社会的地位や評価の向上
    権力欲がある人は、社会的な地位や評価を高めることを目指します。そのため、自分の仕事やプロジェクトに対して積極的に取り組んだり、人とのコミュニケーションを上手に行うなど、自己実現や社会的な成功を追求することができます。
  • 自己主張や自己表現の向上
    権力欲がある人は、自分の意見や考えを積極的に主張することができます。そのため、自己主張や自己表現の能力が向上し、自分自身のアイデンティティを確立することができます。

例えば、ある人が権力欲を持っているとすると、自分のキャリアアップを目指して自己研鑽を怠らず、プロジェクトや業務に積極的に取り組みます。

また、自分の意見や考えを周囲の人に積極的に伝え、自分自身の存在感をアピールします。

これによって、上司や同僚からの信頼や評価を得ることができ、キャリアアップや昇進につながる可能性があります。

4、承認欲求

承認欲求は、人が自分自身や自分の行動、思考、価値観などを他者から認められ、肯定されたいという欲求です。

アドラー心理学では、承認欲求を持つこと自体は悪いことではなく、人間の自然な欲求の一つであるとされています。

しかし、承認欲求が過剰になると、他者の評価や意見に依存して自己評価や自己肯定感を形成し、自分自身が自分自身でなくなってしまうことがあります。

そのため、自分自身の価値観や自己評価を確立することが重要とされています。

承認欲求を明確にすることで、自己評価や自己肯定感を高めることができます。

自分自身がどのような承認を求めているのかを知り、その欲求を満たすためにはどのような行動を取ればよいのかを考えることが大切です。

例えば、仕事で上司や同僚からの評価を重視する人は、その評価を得るために必要なスキルや能力を磨くことで、自己評価や自己肯定感を高めることができます。

また、人間関係で承認欲求が強い人は、自分自身の価値観や信念をしっかりと持ち、それをしっかりと伝えることで、自分自身の存在価値を高めることができます。

ただし、承認欲求を満たすために、自分自身が大切にしているものを犠牲にすることは避ける必要があります。

自分自身が大切にするものをしっかりと持ち、それを守りながら、他者からの承認を得ることが大切です。

承認欲求を明確にするメリット

  • 自分の人生の目的を見つけるために、承認欲求をどのように満たそうとしているのかを理解できます。
  • 承認欲求が強い場合、周りからの評価に左右されやすくなるため、自分の価値観や信念を見つめ直すことができます。
  • 承認欲求が弱い場合、自分自身や周囲の人々との関係に問題が生じることがあります。承認欲求を明確にすることで、このような問題を解決するためのアプローチを考えることができます。
  • 自分が何に興味があるのか、何をしたいのかを見つけることができます。自分が得意なことや好きなことを追求することで、承認欲求が自然に満たされることがあります。
  • 承認欲求を満たすために、他人の意見に流されやすくなることがあります。しかし、自分自身の欲求や目的を明確にすることで、自分自身の考えや決断を下すことができます。

承認欲求を明確にすることで、自分自身の行動や思考に対する正当化ができ、自己肯定感や自信が高まります。たとえば、自分の職場でのパフォーマンスについて不安を感じている場合、承認欲求を明確にすることで、自分がどのような評価を得たいかを明確にすることができます。

まとめ

アドラー心理学では、人間の欲求や動機づけを総合的に捉えています。

目的意識や社会性を重視し、自己実現と社会的な利益を同時に追求することができる理論として、有効性が高く評価されていますので、ご自分の人間の欲求や動機づけを定期的に見つめ直すことが必要です。

 

参考資料:

  • アルフレッド・アドラー著
    『個性の創造』(1927)、『アドラー心理学』(1929)、『社会感覚教育』(1933)、『自己信頼の心理学』(1942)
  • Adler, A. (1927). The Practice and Theory of Individual Psychology. Harcourt, Brace & Company.
    Mosak, H. H., & Maniacci, M. P. (1999). A primer of Adlerian psychology: The analytic-behavioral-cognitive psychology of Alfred Adler. Psychology Press.
  • Carlson, J., & Englar-Carlson, M. (2017). Adlerian therapy: Theory and practice. American Psychological Association.
  • Sharf, R. S. (2015). Theories of psychotherapy and counseling: Concepts and cases. Cengage Learning.