NLPで学ぶミルトンモデル④-2:観察力

観察力:無意識のサインを読み取る技術

「変化は小さな一歩から始まる。」

— ミルトン・エリクソン

1. 観察力とは何か?

観察力とは、クライアントの言葉・表情・身体の動き・呼吸・声のトーンなど、あらゆる非言語的なサインを読み取る能力です。

エリクソンは、催眠誘導や暗示を成功させるためには、クライアントがどのように反応しているのかを細かく観察し、それに応じてアプローチを調整することが重要だと考えました。

特に、無意識のサインを見逃さないことが、エリクソン派催眠療法の大きな特徴です。

2. 観察するべきポイント

エリクソンは、以下のようなポイントを細かく観察し、それを催眠誘導や治療に役立てました。

① 表情の変化

クライアントの表情は、意識的にはコントロールしにくいため、無意識の反応が表れやすい部分です。

✅ 観察ポイント

  • まぶたが少し重くなった(催眠状態に入りかけている)
  • 眉間のしわが消えた(緊張がほぐれた)
  • 口角が少し上がった(安心感が生まれた)

✅ 具体例
治療者:「この部屋の雰囲気を楽しんでいただいているようですね。」
(クライアントの表情がリラックスしてきたことを利用し、さらに安心感を高める。)

② 目の動き

目の動きは、クライアントがどのような思考をしているかを示します。

✅ 観察ポイント

  • 上を向く → 未来のことを考えている
  • 下を向く → 過去や内面を振り返っている
  • 目を閉じる → 深いリラックス状態に入っている

✅ 具体例
クライアントが下を向いているとき、「今、過去のことを思い出しているかもしれませんね」と言うことで、無意識のプロセスを促進できます。

③ 呼吸のリズム

呼吸は、催眠状態への移行やクライアントのリラックス度を示す重要なサインです。

✅ 観察ポイント

  • 呼吸がゆっくりになる → リラックスが深まっている
  • 呼吸が浅くなる → 緊張や不安がある
  • 一瞬息を止める → 何かに驚いたり、気づきを得た

✅ 具体例
治療者:「今、少し呼吸が落ち着きましたね。それは、リラックスが深まっているサインかもしれません。」

(クライアントの無意識の変化を言語化することで、催眠状態をさらに促進する。)

④ 声のトーンやスピード

クライアントの声の調子も、無意識の状態を示す重要な指標です。

✅ 観察ポイント

  • 声が低くなる → 落ち着いている、催眠状態に入りかけている
  • 声が高くなる → 緊張している、警戒している
  • 話すスピードが遅くなる → 深くリラックスしている
  • 話すスピードが速くなる → 興奮している、不安がある

✅ 具体例
クライアントが興奮して速く話しているとき、治療者も最初は同じペースで話し、徐々にゆっくりとしたトーンに変えることで、クライアントのリズムを落ち着かせることができます(ペーシング&リーディングの技法)。

⑤ 体の動きや姿勢

クライアントの姿勢や体の動きも、無意識の変化を示します。

✅ 観察ポイント

  • 肩の力が抜けてくる → リラックスしている
  • 手や指先が微かに動く → 無意識の反応が表れている
  • 体が前に傾く → 話に興味を持っている、催眠状態が深まっている

✅ 具体例
クライアントが無意識に指先を動かし始めたら、「あなたの無意識が、すでに何かを感じ始めているかもしれませんね」と伝えることで、より催眠状態を深めることができます。

3. 観察した情報をどう活用するか?

エリクソンは、クライアントの反応をただ観察するだけでなく、それを利用して催眠誘導を強化しました。

🔹 クライアントの反応をフィードバックとして利用する

エリクソンは、クライアントのちょっとした反応を即座に言語化し、催眠の流れに組み込む技法を用いました。

✅ 具体例 状況: クライアントが無意識に首をかしげた。
治療者の対応:
「あなたの無意識が、何か新しいことを発見しようとしているかもしれませんね。」

(無意識の動作を催眠の一部として利用し、クライアントの自己発見を促す。)

4. 初心者が観察力を高めるための練習法

初心者がエリクソンのような鋭い観察力を身につけるために、以下の練習をおすすめします。

① 「まばたきの回数」を数える

クライアントのまばたきが増えたら、「意識的な思考から無意識のモードに移行し始めている」と考えられます。日常の会話でも、相手のまばたきに注目してみましょう。

② 「話すスピードの変化」を感じ取る

クライアントの話すスピードやトーンが変化した瞬間に、「今、どんなことを感じていますか?」と問いかけてみる。

③ 「リラックスのサイン」を観察する

クライアントがリラックスし始める瞬間(肩の力が抜ける、まぶたが重くなる)を見逃さず、フィードバックする練習をする。

5. まとめ

観察力は、エリクソン派催眠療法の基礎となる重要なスキルです。クライアントの微細な変化を察知し、それを治療に活かすことで、より効果的な催眠誘導が可能になります。

✅ 観察力を高めるためのポイント

  • 表情の変化(リラックス・緊張のサインを読む)
  • 目の動き(クライアントの思考プロセスを知る)
  • 呼吸のリズム(深まるリラックスを確認)
  • 声のトーンやスピード(クライアントの感情を探る)
  • 体の動きや姿勢(無意識の反応を見逃さない)
  • フィードバックとして活用(クライアントの動きを暗示に利用)

エリクソンのように、クライアントの小さな変化を捉え、自然に活用できるよう練習を重ねていきましょう。

ラポールについてはこちらの記事により詳細に記載していますので、ぜひご覧ください↓

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