カウンセリングの技法のなかでも簡単に見えて最も難易度が高いと言われているのが「傾聴」です。傾聴の方法にも種類があり、大きく分けて9種類に分類されます。
傾聴の基本的な技術は以下のものがあります。
さらに、話を聞いているときに“うなずき”“あいづち”を適度な頻度で入れることによって、話を聞いているよと表すことができます。
1、共感
相手の立場になって感じ、その気持ちを自然な言葉で伝える。
そのことにより、相手は受け入れられていると感じる。
「この人は、私の話を理解してくれる」と実感してもらうことが目的です。
例えば、何かしらの災害にあったクライアントだとします。
・話し手「〇〇を経験したトラウマから抜け出せなくて…」
それに対して共感する場合…
・聞き手「・・・それはショックですね。辛かったでしょう。」
・聞き手「今、お辛いんですね」
・聞き手「トラウマになってしまったのですね」
など、相手の気持ちに寄り添い、確かめるような聴き方をします。
2、促し
相手の話が進みやすいように「促しの接続詞」を使います。
この「促しの接続詞」とは、英語の”And”に当たり、「それから?」「それで?」といった言葉が相当します。
そのことにより相手の話す意味を促し、話が展開しやすくなります。
これと対極にあるのが”But”であり、「でも」、「だって」、「そうかな」といった言葉になります。
・話し手「最近、職場へ行くのが嫌なんです。」
・聞き手「どんな感じですか?」
・話し手「…なんか、つらい感じがします。」
・聞き手「うん、なるほど、それで?」
・話し手「あくびはでるし、眠たいし、早く帰りたくなる。」
・聞き手「そういうとき、いつもはどのように対応されていますか?」
3、繰り返し
相手の話す言葉の一部または全部をそのまま繰り返す。
そのことにより相手は、話を受け止めてもらっていると感じます。
また、自分の言葉を確認し、振り返ることにもなります。
・話し手「急に方針が変わって、不安な気持ちになったんです。」
・聞き手「不安な気持ちになったんですね」
すると相手の話をしっかりと聞いているよとアピールすることになり、相手の会話を引き出すことに繋がります。会話に詰まってしまったときも使えます。
4、言い換え
相手が話していたことに対して別の言葉に言い換えて話題を膨らませたり、相手に視点を変える方法です。
例えば
・話し手「私の好きなものは実家で飼っている柴犬です」
・聞き手「そうなんですね。◯◯さんは犬そのものが好きなのですか?」
・話し手「仕事で〇〇をしたら失敗してしまったよ」
・聞き手「その立場や環境で〇〇をするとうまくいかないことがわかったのですね」
好きなものを広げたり、違う視点でものごとを捉えたりすることができます。
5、要約
相手の話の要点をまとめ、伝える。そのことにより相手は、自分が話した内容を整理・確認できる。
相手が話をしていて、話したいことがたくさんあったり自分でも伝えたいことがまとまっていないと「何を伝えたかったのか?」がわからなくなってしまいます。
そんなとき、要約して話をまとめてあげるとわかりやすくなります。
・聞き手「つまり、◯◯さんが言いたいことは×××ということなんですね」
など、話がながくなってしまいがちなクライアントの言葉をまとめます。
長いカウンセリングのなかから大切な要点をまとめるので、高い技術を必要とします。
6、明確化
相手が抱えている問題を明らかにする必要があります。
相手の経験や物の捉え方、考え方などを傾聴していきます。
問題が生じたプロセスや背景にはどれぞれ異なった原因があるものです。
詳細がわからないまま解決法を探そうとするのは、結果として問題を長引かせる原因にもなります。
・話し手「職場の先輩との人間関係がうまくいきません」
・聞き手「そうなんだね、良かったら詳しく話してもらえるかな?」
・話し手「先輩が高圧的な態度で接してくることも多くて…」
・聞き手「うん、それで?」
・話し手「教えてもらいたいことや聴きたいことがあっても相談しづらくて…」
・聞き手「今まで何度もそういうことがあったの?」
といったように相手の考えを否定するわけでもなく、話を明確にしていき、どこに問題があるのかを探し出します。
問題点の話をするとき、相手にとっては嫌な気持ちを再度思い出さなくてはいけなくなることもあり、つらい体験になることもあります。相手の気持ちに配慮することを忘れずに。
7、沈黙
「沈黙」は「間」でもあります。
「間」の感覚は重要で、話し手が自分を見つめ、考えを整理するためにも尊重する必要があります。
クライアントと話をしていて、沈黙状態になってしまいあなたから会話を切り出してしまったことはありませんか。
あと少し待っていれば相手が答えを話してくれたかもしれません。
次々に会話を重ねてしまうと本質が見えなくなってしまうのです。
これは人間の沈黙が怖い、苦手だと思う気持ちの現われです。
沈黙になってしまったときはノートを広げたりしながら、笑顔で話し始めてくれるのを待つこと。
「沈黙は必要な大切な間ですから、気にせず沈黙を続けていても大丈夫です。あなたの話をそばで待っていますからね」と気持ちを伝えることが大切です。
8、質問
〇「オープン・クエスチョン(開かれた質問)」
事実を明確にしたり、さまざまな可能性や視野を広げる質問
When(いつ)? Where(どこで)? Who(誰が)?
What(何を)? How(どのように)?
If(もし~だったら)?
※what howはカウンセリングで特に需要な質問になります。
×「クローズド・クエスチョン(閉じられた質問)」
「はい」、「いいえ」の二者択一で答えられる質問
Why(なぜ)?・・・詰問、問い詰められたように感じることがある
以下の記事もご参考にしてください↓
9、保証
不安な状態、何かしらの恐れを抱いている相談相手に対して、安心させたり、勇気づけたりしながら、課題や問題に対して向き合うための自信をつけてもらう。
・話し手「私に〇〇をまとめる仕事なんてできるでしょうか?」
・聞き手「あなたでしたら、大丈夫です。最善を尽くしていれば周りの人も協力してくれますよ!」
この方法は、相談相手の不安を十分に聞き取り、受け止めた後の方でしか使えません。
もし相談相手から求められれば、「大丈夫」といういうだけの根拠を答えられるぐらいのものがカウンセラーにあることが必要です。
まとめ
傾聴における聴き方の種類について説明してきまました。
クライアント自身の話を促したり気付きを与え共感することで、お互いの信頼関係を築いていきます。
そして、傾聴は何度も繰り返すことで技術が身についていくものです。
参考文献:
カウンセリング・テキスト 佐谷 力 著/ほんの森出版
河合隼雄のカウンセリング入門 河合隼雄 著/創元社出版