「素晴らしいアイデアを思いついたのに、すぐに『でも予算が……』と否定して断念してしまった」 「会議で新しい企画を出したら、リスクばかり指摘されて話が前に進まない」
新しいことを始めようとするとき、私たちの心の中(あるいはチームの中)では「創造性」と「批判」が衝突し、結局何も生まれないということがよく起こります。
世界的なエンターテインメント帝国を築いたウォルト・ディズニーは、この対立を解消し、夢を現実のものにするための「3つの異なる視点」を使い分けていました。NLP(神経言語プログラミング)ではこれを「ディズニー・ストラテジー」と呼び、卓越した成果を出すための思考戦略として体系化しています。
今回は、あなたのプロジェクトを成功に導く「ディズニーの魔法」を紐解いていきましょう。
1. なぜ、私たちのプロジェクトは止まってしまうのか?
多くの人が陥る失敗の原因は、「視点の混同」にあります。
- アイデアを出している最中に、リスクを考えてしまう。
- 具体的な段取りを決める前に、完璧さを求めて批判してしまう。
これでは、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものです。ウォルト・ディズニーは、この「アクセル(創造)」と「ブレーキ(批判)」を完全に分離し、それぞれを「3つの部屋」として物理的に分けることで、驚異的な成功を収めました。
2. ディズニー・ストラテジー:3つの役割
成功を確実にするには、以下の3つの役割を順番に、かつ独立して行うことが重要です。

1. ドリーマー(夢想家・起業家):何を実現したいか?
まずは「制約」を一切無視するフェーズです。
- 視点: 制限のない自由な発想。
- 問い: 「もし何でもできるとしたら、何を実現したい?」「最高の状態はどんなもの?」
- 具体例: 企画の初期段階で、「予算1億円、人員100人で、世界中が驚くサービスを作るとしたら?」とワクワクするイメージを最大限に膨らませます。ここでは「どうやって(How)」や「リスク(But)」は一切禁句です。
ドリーマーは、夢を見ている人のことで、非現実的なことばかりを話しています。無から有をつくる人であり、新しいものを産みだす人。そこに命を吹き込める人。「はじまり」を作れる人です。さらに重要なのは、その「はじまり」に「命」を吹き込める人。そこに命を宿せるか、が重要です。
2. リアリスト(現実家・実務家):どうやって実現するか?
次に、ドリーマーの夢を「実行可能な計画」に落とし込むフェーズです。
- 視点: 論理的、現実的な手順。
- 問い: 「この夢を実現するための具体的なステップは?」「必要なリソース(人・モノ・金・情報)は?」
- 具体例: 1億円の予算がないなら、まずは10万円でテスト版を作る。誰に協力を仰ぐか。いつまでにマイルストーンを置くか。ドリーマーの描いた図面を、建築計画書に変えていきます。
戦略的に行動する現実的な人です。夢や目標を達成するためにはどうしたらいいのかを常に考え行動します。客観的な視点を持って、何を、いつまでに、どのように行えば、その目的が達成するのかを常に考える。これが重要です。
3. クリティック(批判家・管理者):何が抜けているか?
最後に、計画の「穴」を見つけるフェーズです。ただし、目的は「中止させること」ではなく**「計画をより堅牢にすること」**です。
- 視点: リスク管理、客観的な評価。
- 問い: 「何が問題になる可能性があるか?」「見落としているリスクは?」「顧客はどう反応するか?」
- 具体例: 「サーバーがダウンしたらどうするか?」「法規制に触れないか?」といった懸念点を洗い出します。
批判的な人が位置するポジションになり、分析しチェックする為の人です。
- 「そんなに夢見がちだけど、本当に実現できるの?」
- 「そのための準備はできているの?」
など建設的な観点から批判することによって夢をより現実的にするものです。現状を維持するという立場から、新しいことをはじめるとき、あれこれ正論を持ち出し、新しいことをすると、このようなリスクがあること、問題・課題がこんなにでてくることを正確に伝えること。これが重要です。
3. 【実践ガイド】明日から使える「一人会議」のやり方
ディズニー・ストラテジーを最大活用するコツは、「場所を変えること」です。NLPではこれを「空間アンカリング」と呼び、場所と役割をセットにすることで思考の切り替えをスムーズにします。
ステップ1:3つの場所(椅子)を用意する
部屋の中に3つのスペースを確保してください(3つの椅子を並べても構いません)。
- ドリーマーの場所: 日当たりの良い窓際や、リラックスできるソファ。
- リアリストの場所: パソコンのあるデスクや、事務的な椅子。
- クリティカルの場所: 部屋の隅や、少し離れた客観的に見渡せる場所。
ステップ2:順番に座って思考する
- ドリーマーの場所へ行く: 5分間、自由に夢を描き、ノートに書き出します。
- 一度立ち上がり、体を動かす(状態のリセット): 深呼吸をして、一度まっさらな状態になります。
- リアリストの場所へ行く: ドリーマーのメモを見ながら、具体策を練ります。
- リセット後、クリティカルの場所へ行く: 計画を冷静にチェックし、課題を抽出します。
ステップ3:サイクルを回す
クリティカル(批評家)が指摘した課題は、再び「ドリーマー」や「リアリスト」に戻して解決策を考えさせます。 この「ドリーマー → リアリスト → クリティカル → ドリーマー…」のサイクルを繰り返すことで、アイデアは現実的かつ隙のない完璧なものへと磨き上げられていきます。

4. ビジネスチームでの活用例
この手法はチーム会議でも絶大な効果を発揮します。
- ドリーマー・タイム: 全員でブレスト。「否定的な意見は一切禁止」というルールを徹底します。
- リアリスト・タイム: 実務担当を中心に、マイルストーンをホワイトボードに書き込みます。
- クリティカル・タイム: 敢えて「悪魔の代弁者(あまのじゃく役)」を立てて、徹底的に粗探しをします。
こうすることで、会議特有の「声の大きい人の批判で良い芽が摘まれる」現象を防ぎ、全員の能力を最大限に活用できます。
5. まとめ:あなたは「どの視点」が強すぎますか?
私たちは無意識に、特定の役割に偏りがちです。
- ドリーマーが強い人:夢は大きいが、実現が伴わない。
- クリティカルが強い人:新しいことに挑戦できず、停滞する。
ディズニー・ストラテジーは、あなたの中にいるこれら3人の才能を、仲直りさせて協力させるためのフレームワークです。
明日、もし仕事で行き詰まったら、まずは「椅子を移動させてみる」ことから始めてみてください。 視点が変われば、見えてくる解決策も必ず変わります。
このディズニー・ストラテジーを試すとき、特に「ドリーマー(夢想家)」のフェーズで具体的なイメージが湧きにくい場合は、以前ご紹介した「VAKモデル(視覚・聴覚・身体感覚)」を使って、よりリアルな五感で夢を描いてみるのがおすすめです。
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