NLP(神経言語プログラミング)の重要な技法である「インテグレーション(統合)」を、働く人が直面する「心のジレンマ」を解消するための実践ガイドとして記事にしました。
「あっちを立てればこっちが立たず」という心の葛藤を終わらせ、納得感を持って前進するための具体的なステップを解説します。
「新しいことに挑戦したいけれど、失敗するのが怖くて足がすくむ」
「仕事をバリバリこなしたいけれど、プライベートの時間も大切にしたい」
「厳しく指導すべきだと思うけれど、嫌われたくない気持ちもある」
仕事をしていると、このように「Aしたい、でもBも捨てがたい」という心の引き裂かれるような葛藤(ジレンマ)に直面することがよくあります。どちらか一方を選ぼうとすると、選ばなかった方が「でも、本当にそれでいいの?」と心の中で反乱を起こし、結局どちらも中途半端になってしまいがちです。
NLP(神経言語プログラミング)では、この状態を「自分の中に異なる目的を持った『パーツ(部分)』が対立している状態」と考えます。
この記事では、対立する2つのエネルギーをぶつけ合わせるのではなく、一つに溶け合わせて強力な原動力に変える「インテグレーション(統合)」の手法を解説します。
1. 葛藤の正体:あなたの中に「2人の正義」がいる
まず知っておいてほしいのは、「葛藤が起こるのは、あなたが優柔不断だからではない」ということです。
あなたの中に、異なる役割を持った「2人の自分(パーツ)」がいて、それぞれがあなたの人生を良くしようとして、別の方向へハンドルを切ろうとしているだけなのです。
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パーツA: 「成長のために、もっと難しい仕事に挑戦すべきだ!」(目的:自己実現・達成感)
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パーツB: 「今は無理をせず、安定を守るべきだ」(目的:安全・心身の健康)
どちらも「あなたのための善意」で動いています。この2つを戦わせるのではなく、両方の言い分を聞いて「協力体制」を作ることがインテグレーションの目的です。

2. 【具体例】仕事でよく起こる「心の綱引き」
具体的にどのような葛藤が職場で起こりやすいか、見てみましょう。
事例A:キャリアの葛藤(挑戦 vs 安定)
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状況: 責任あるリーダー職への打診。
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右手のパーツ: 「チャンスだ、自分の力を試したい!」
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左手のパーツ: 「今のままでも十分。責任が増えて自由がなくなるのは嫌だ。」
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統合の視点: 「自分を成長させたい」意図と「自分を自由でいさせたい」意図。両方を満たす「効率的なリーダー像」を模索するきっかけになります。

事例B:コミュニケーションの葛藤(誠実さ vs 調和)
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状況: チームの間違った方針に意見を言いたい。
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右手のパーツ: 「正しいことを言うべきだ。このままだと失敗する。」
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左手のパーツ: 「ここで空気を壊すと、今後の関係が悪くなる。我慢しよう。」
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統合の視点: 「プロジェクトを成功させたい」意図と「良い人間関係を保ちたい」意図。両方を満たす「相手を尊重した上での建設的な提案法」へと進化させます。

3. 実践!「2人の自分」を仲直りさせる3ステップ・ワーク
NLPの「ビジュアル・スカッシュ」という技法をベースにした、一人でもできるワークです。
Step 1:両手に「パーツ」を乗せる
葛藤している2つの気持ちを感じてみます。
右手のひらの上に「挑戦したい自分」を、左手のひらの上に「安定を守りたい自分」を、それぞれイメージとして乗せてみます。
(それぞれのパーツはどんな形、色、重さをしていますか? 擬人化してもOKです)
Step 2:それぞれの「高い目的」を聴く
それぞれの手に語りかけ、前回の記事で学んだ「肯定的意図」を探ります。
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右手に聞く: 「私に挑戦させて、最終的にどんな良い状態を私に与えようとしているの?」 ⇒ 「達成感や自信を与えたい」
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左手に聞く: 「私を安定させて、最終的にどんな良い状態を私に与えようとしているの?」 ⇒ 「心身の平和や安全を与えたい」
不思議なことに、さらに深く掘り下げていくと、「幸せになりたい」「充実した人生を送りたい」といった、同じゴールに突き当たることがほとんどです。
Step 3:統合(インテグレーション)する
「2人とも、結局は私の幸せを願ってくれているんだね」と、その共通の目的に感謝します。
そして、両方のパーツが協力して、共通の目的を達成するイメージを持ちながら、ゆっくりと両手を中央で合わせます。2つのイメージが混ざり合い、新しい光や感覚に変わるのを感じてください。

4. 明日から使える「統合的思考」のコツ
ワークをする時間がない時でも、葛藤を感じたら次の「問い」を自分に投げかけてみてください。
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「対立」ではなく「役割分担」と考える
「アクセル役」と「ブレーキ役」が同時に動いているだけだと考えます。車には両方必要です。「ブレーキがいるおかげで、私は事故を起こさずに済んでいるんだな」と捉え直します。
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「第3の道」を探す
「AかBか」の二択で悩むのではなく、「AとB、両方の『良い目的』を同時に叶える方法はないだろうか?」と脳に質問します。
(例:挑戦しながらも、しっかり休みを確保できるスケジュールを組むには?)
5. まとめ:葛藤は「進化」のサイン
心の中に葛藤が生まれるということは、あなたがそれだけ多様な価値観を持ち、多方面から物事を考えられるようになった証拠です。
インテグレーションとは、どちらかの自分を殺すことではありません。
「異なる自分」を統合し、よりスケールの大きな自分へとアップデートするプロセスなのです。
明日、心の中に迷いが生じたら、それは「新しい自分」に出会うチャンスです。両方の自分の言い分を優しく聴き、一つの力強いエネルギーに変えていきましょう。
「働く人のコミュニケーション学」では、内面の葛藤を調和に変え、最高のパフォーマンスを引き出すための心理学をお伝えしています。
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