No.91 相手の気持ちを知るポジションチェンジ

コミュニケーションでは「伝えたつもり」と「相手が受け取ったこと」にズレが生じることがよくあります。

この誤解が原因で、仕事の進行に支障が出たり、信頼関係に影響を及ぼしたりすることも多々発生します。
そこで役立つのが「ポジションチェンジ」という考え方です。

相手の立場に立ち、「自分が相手ならどう受け取るか?」を考えることで、ミスコミュニケーションを減らし、信頼を深めることができます。

誤解が生まれる原因とその影響

1. 伝えたつもりでもズレが生じる理由

私たちは日々、言葉を使ってコミュニケーションを取っています。
しかし、「伝えたこと」と「相手が理解したこと」が必ずしも一致するとは限りません。
そのズレが生じる主な理由は以下のとおりです。

  1. 言葉の解釈は人それぞれ違う
    同じ言葉でも、聞き手の経験や価値観によって受け取り方が異なります。例えば、「すぐに対応してください」と伝えたとき、自分は「5分以内」と思っていても、相手は「今日中」と解釈することがあります。
  2. 相手の背景や前提が異なる
    相手の知識や状況を考えずに話すと、誤解を生みやすくなります。例えば、業界用語や専門用語を使うと、相手が意味を知らずに誤った理解をする可能性があります。
    また、チームの方針を知らない新入社員に指示を出す場合、説明が不十分だと「何をどうすればいいのか」が伝わりません。
  3. 「伝えた=理解された」と思い込む落とし穴
    自分の中では完璧に説明できたと思っていても、相手が同じように理解したとは限りません。
    特に、一方的に話すだけでは、相手がどこまで正しく受け取っているか分かりません。「言ったのに伝わっていなかった」というトラブルは、こうした思い込みから生まれます。

2. 誤解が生むビジネス上のリスク

コミュニケーションのズレは、仕事にさまざまな悪影響を及ぼします。
特に、ビジネスの場では次のようなリスクが発生します。

  1. 指示の誤解による業務の遅れ
    上司が「この作業を優先して」と指示を出したつもりでも、部下が「他の業務と並行して進めればいい」と解釈した場合、期限に間に合わないことがあります。
    伝え方の違いひとつで、スケジュールに影響が出てきます。
  2. 認識のズレがトラブルを引き起こす
    「シンプルなデザインにしてください」と要望されたとき、自分は「白を基調としたシンプルさ」と考えていても、クライアントは「文字数を減らしたシンプルさ」を求めているかもしれません。
    このズレに気づかないまま進めると、納品後に「こんなはずではなかった」とクレームにつながることがあります。

コミュニケーションにズレがあると、「この人とは話が通じない」「何度も確認しないと安心できない」と思われてしまいます。結果として、信頼関係が築きにくくなり、円滑な協力が難しくなることもあります。

伝えたつもりでも、相手が意図どおりに受け取るとは限りません。
その原因は、言葉の解釈の違いや、相手の前提知識の差、そして「伝えたから大丈夫」という思い込みにあります。

ポジションチェンジで誤解を防ぐ方法とその影響

1. ポジションチェンジとは?

ポジションチェンジとは、「相手の立場になって考える」ことで、コミュニケーションのズレを防ぐ方法です。

単に自分の言いたいことを伝えるのではなく、「もし自分が相手だったら、どう受け取るか?」を意識することで、伝え方を工夫できるようになります。

この習慣を持つことで、相手にとって分かりやすい表現を選び、誤解のないやり取りが可能になります。

2. ポジションチェンジの実践方法

ポジションチェンジを取り入れるには、具体的な場面を想定しながら実践することが重要です。以下の3つの視点で考えてみましょう。

  1. 相手が「聞き手」だったら?
    発言する前に、「この説明は相手にとって分かりやすいか?」と考えます。たとえば、専門用語を多用すると、相手が理解しづらくなる可能性があります。その場合、「例え話を入れる」「噛み砕いて説明する」といった工夫が必要です。
    さらに、「こういう認識で合っていますか?」と確認の質問を加えることで、誤解を減らせます。
  2. 相手が「クライアント」だったら?
    クライアントへの提案をする際、「この説明で納得できるか?」という視点を持つことが大切です。
    例えば、「この商品は最新技術を搭載しています」と言うだけでは、具体的な価値が伝わらないかもしれません。
    クライアントの立場なら、「どんな問題を解決できるのか?」が気になるはずです。「〇〇の課題を解決し、コスト削減につながります」と、相手のニーズに即した伝え方に変えることで、理解が深まりやすくなります。
  3. 相手が「部下」だったら?
    指示を出すとき、「どのように伝えたら動きやすいか?」を考えると、業務の進行がスムーズになります。例えば、「急ぎで対応して」と伝えるだけでは、優先度が分からず混乱する可能性があります。
    「今日の15時までに完了させてほしい。最優先で進めてほしい」と伝えれば、認識のズレがなくなります。相手の立場に立つことで、的確な伝え方ができるのです。

ポジションチェンジを習慣化すると、ミスコミュニケーションが減少し、コミュニケーションの精度が向上します。

まとめ

ポジションチェンジを取り入れることで、相手の気持ちを理解しやすくなり、誤解を防ぐことができます。それだけでなく、「気が利く」「話が分かる」と評価され、信頼関係の構築にもつながります。

伝えるだけで終わるのではなく、「相手がどう受け取るか」を意識し、より良いコミュニケーションを目指しましょう。

こちらの記事もおすすめです↓

相手を理解する:ポジションチェンジ
職場や学校・家庭などの人間関係に悩んでいる人は多いものです。「なんであのひとは私の気持ちがわからないんだろう」と思い、落ち込んでしまう人もいるのではないでしょうか。このような経験はあなただけでなく、誰もが人生で一度は...