この手法は、NLP(神経言語プログラミング)の中でも特に「即効性」があり、自分一人で心のモヤモヤを解消できる強力なツールです。「相手の気持ちがわからない」という悩みを、「なるほど、相手はこう見えていたのか!」という深い納得感に変えるためのステップを詳しく解説します。
1. はじめに:なぜ「わかろう」としても、わからないのか?
仕事でも私生活でも、対人関係のストレスの多くは「なぜ、あの人はあんな態度を取るのか?」「どうして私の意図が伝わらないのか?」という、視点のズレから生まれます。
私たちは誰しも、自分なりの「世界地図(物事の見方)」を持って生きています。NLPの基本前提には「地図は領土ではない」という言葉があります。これは、私たちが捉えている世界は、あくまで自分自身のフィルターを通した「解釈」に過ぎないことを意味します。

相手を理解しようとして頭で考えるだけでは、自分の地図から抜け出すことは困難です。そこで有効なのが、身体を動かすことで強制的に視点を切り替える「ポジションチェンジ」です。
2. 3つの視点(ポジション)を知る
ポジションチェンジでは、一つの問題を「3つの立ち位置」から眺めます。
| ポジション | 視点 | 特徴 |
| 第1ポジション | 自分自身 | 自分の感情、欲求、言い分をありのままに感じる。 |
| 第2ポジション | 相手 | 相手の靴を履くように、相手になりきって自分を見る。 |
| 第3ポジション | 観察者 | 映画の観客のように、二人を客観的に眺める。 |
これらを順に体験することで、「他者の世界地図を尊重すること」が可能になり、コミュニケーションの根本条件が整います。
3. 実践!ポジションチェンジの5ステップ
家や会議室など、一人になれる静かな場所で、椅子を3脚(または床のスペースを3点)用意して行います。
ステップ1:第1ポジション(自分)
まずは自分の椅子に座り、悩んでいる相手が目の前にいると想像します。
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問いかけ: 「今、相手に対して何を感じていますか?」「本当は何を伝えたいですか?」
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ポイント: 自分の感情を抑えず、100%自分になりきってください。
ステップ2:ブレイク(状態の分離)
一度立ち上がり、深呼吸したり、部屋の隅を見たりして、今の感情をリセットします。
ステップ3:第2ポジション(相手)
相手の椅子に移動し、「自分は相手そのものだ」と思い込みます。相手の姿勢、表情、呼吸の深さを真似るのがコツです。
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問いかけ: 「第1ポジションにいる『自分』はどう見えますか?」「どんなプレッシャーや不安を抱えていますか?」
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ポイント: 相手の目線で自分を見ることで、相手の「肯定的意図(その行動の裏にある善意や目的)」が見えてくることがあります。
ステップ4:第3ポジション(観察者)
二人の椅子から離れた場所へ移動します。二人のやり取りを、テレビの画面越しに見ているような感覚で眺めます。
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問いかけ: 「この二人の関係性はどのような状態ですか?」「解決のために、それぞれにどんなアドバイスを贈りますか?」
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ポイント: 感情を交えず、物理的な距離や声のトーンなどを客観的に分析します。ここでは問題が「機会(チャンス)」として見えてくるはずです。
ステップ5:第1ポジションへ戻る(統合)
最後にもう一度自分の椅子に戻ります。第2、第3ポジションで得た気づきを携えて、改めて相手を見てみます。
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問いかけ: 「最初と比べて、感じ方に変化はありますか?」「明日、最初の一歩として何を変えますか?」

4. 具体例:高圧的な上司との関係を解きほぐす
例えば、いつも進捗を厳しく問い詰めてくる上司との関係で悩んでいる「事務職のAさん」のケースを考えてみましょう。
【第1:自分】 「また怒鳴られた。怖いし、私の努力を認めてくれていない!」
【第2:上司】 (上司になりきってみる)「ああ、実は上の役員からものすごい数字のプレッシャーを受けているんだ。Aに厳しく言いたくないが、ミスが出たら自分もAも守りきれなくなるのが怖いんだ……」
【第3:観察者】 「上司は余裕がなく、Aさんは萎縮してさらにミスを恐れている。この悪循環を断つには、Aさんから先に『進捗を細かく報告する』ことで上司を安心させるのが近道かもしれない」
このように、相手になりきることで「誰かにできることならば、あなたにも可能である」というポジティブな変化へのリソース(資源)が見つかります。
5. 明日から使える!ポジションチェンジのコツ
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「身体を動かす」ことが絶対条件: 頭の中だけでシミュレーションせず、必ず立ち上がって場所を移動してください。身体の動きが脳のスイッチを切り替えます。
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「失敗」を恐れない: うまくなりきれなくても大丈夫です。NLPでは「失敗とは結果の一つ」に過ぎず、そこから何を学んだかが重要です。
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小さな違和感から試す: 大喧嘩の真っ最中よりも、「なんとなく話しにくいな」という程度の日常的な関係性から練習すると、感覚が掴みやすくなります。
終わりに
ポジションチェンジを終えたとき、あなたは以前よりも少しだけ「天才と同じ頭脳」を手に入れたような、広い視界を感じているはずです。あなたが相手から受け取った反応は、あなたのこれまでのコミュニケーションの成果です。
もし、その成果を変えたいのであれば、まずは自分の立ち位置を変えることから始めてみませんか?


