NLPで学ぶミルトンモデル④-4:間接的な言語の使用

ミルトンモデル(間接的な言語の使用)

「言葉はしばしば無意識の扉を開く鍵である。」

— ミルトン・エリクソン

1. ミルトンモデル

ミルトンモデルとは、ミルトン・エリクソンが開発した間接的な言語パターンのことで、催眠療法や心理療法で使われます。

この技法の特徴は、曖昧で柔軟な表現を使い、クライアントの無意識に働きかけることです。

従来の催眠療法では、「あなたは今、深くリラックスしています」といった直接的な命令が使われることが多いですが、エリクソンは、クライアントが自発的に変化を受け入れるように、言葉の選び方を工夫しました。

例えば、
「今すぐ催眠に入る」ではなく、
「あなたがリラックスする準備ができたとき、それは自然に起こるでしょう。」
といった言い方をします。

このように、クライアントにプレッシャーを与えず、無意識が自由に変化を受け入れられる状態を作るのが、ミルトンモデルの核心です。

2. 間接的な言語の特徴

🔹 直接的な命令ではなく、間接的な言葉を使う

✅ 具体例

  • 命令的な表現(古典的催眠):「あなたは今、リラックスしてください。」
  • ミルトンモデルの表現:「あなたは、リラックスしていくのを感じることができます。」

間接的な表現を使うことで、クライアントが自分のペースでリラックスできるようになります。

🔹 選択肢を与えて、どちらも催眠に誘導する

✅ 具体例

  • 「あなたは座ったままでも、少し姿勢を変えても、どちらでもリラックスできます。」
  • 「あなたがこのまま静かに目を閉じるのも、自然に閉じるのを待つのも、どちらでかまいません。」

クライアントに選択肢を与えることで、「どちらを選んでも催眠が深まる」ように誘導できます。

🔹 含みを持たせる(前提を作る)

ミルトンモデルでは、「すでに催眠状態になっている」という前提を会話に織り込むことで、無意識に変化を促します。

✅ 具体例

  • 「あなたがリラックスし始めたことを感じることができます。」
    → 「すでにリラックスしている」ことが前提になっている。
  • 「これまでに経験されてきたリラックス方法を、今ここで活かすことができるかもしれませんね。」
    → 「すでに学んだことがある」ことが前提になっている。

🔹 許容的な言葉を使う

ミルトンモデルでは、クライアントに「こうしなさい」と命令するのではなく、「それも良い」「どちらでも大丈夫」といった許容的な表現を使い、無意識に安心感を与えます。

✅ 具体例

  • 「あなたがどんな方法でリラックスするかは、あなたの無意識が知っています。」
  • 「あなたのペースでゆっくり感じてみてください。」

これにより、クライアントは催眠状態に入らなければならないというプレッシャーを感じず、自然に受け入れることができます。

🔹 メタファー(比喩)を使う

ミルトンモデルでは、直接的に「催眠に入る」と言わずに、比喩を使ってイメージを作り出すことで、クライアントの無意識に働きかけます。

✅ 具体例

  • 「湖の水面が静かに波打ち、やがて穏やかになっていくように、あなたの心も落ち着いていきます。」
  • 「まるで春の日差しが氷を少しずつ溶かしていくように、あなたの体の緊張も自然にほどけていきます。」

比喩を使うことで、クライアントは無意識のうちに変化を受け入れやすくなります。

3. 間接的な言語を使った自然な催眠誘導の流れ

① ラポール形成(信頼関係を築く)

✅ 具体例
「今日はお忙しかったんですね。でも、ここでは少しゆったりとした気持ちになれるかもしれませんね。」

(クライアントの状況を受け入れつつ、リラックスできることを暗示する。)

② 無意識への働きかけ

✅ 具体例
「あなたは、どんなリラックスの仕方が好きですか?それはゆっくり深呼吸することかもしれませんし、心地よい記憶を思い出すことかもしれません。」

(クライアントが自分のリラックスの方法を見つけられるように誘導する。)

③ 催眠状態を深める

✅ 具体例
「今、この空間にある静けさに耳を傾けてみると、あなたの心も少しずつ穏やかになっていくのを感じるかもしれませんね。」

(「穏やかになる」ことを前提としながら、クライアントが自分で催眠状態に入ることを促す。)

④ 無意識のリソースを引き出す

✅ 具体例
「あなたの無意識は、これまでにたくさんのことを学んできました。そして、今この瞬間も、新しいことを学び続けています。」

(無意識がすでに学習していることを暗示し、クライアントが安心して催眠状態を受け入れられるようにする。)

4. ミルトンモデル・間接的な言語の効果

ミルトンモデルを使うことで、次のようなメリットがあります。

  • クライアントがリラックスしやすい
    → 命令的な表現ではなく、選択肢を与えることで、プレッシャーを感じにくくなる。
  • 抵抗を減らし、催眠状態に入りやすくなる
    → クライアントが「催眠にかかるかどうか」を意識せず、自然に催眠に入る。
  • クライアントの無意識が自発的に変化を受け入れる
    → 直接的な指示ではなく、比喩や暗示を使うことで、クライアントの無意識が柔軟に反応する。

5. まとめ

ミルトンモデルは、命令的な催眠ではなく、クライアントが自然に催眠状態を受け入れられるようにする言語技法です。

✅ ミルトンモデルの基本ポイント

  • 間接的な言葉を使う(「あなたがリラックスするのを感じるかもしれませんね。」)
  • 選択肢を与える(「目を閉じても、開けたままでもリラックスできます。」)
  • 前提を作る(「あなたがリラックスし始めたことに気づいていますか?」)
  • 許容的な表現を使う(「あなたのペースで進めば大丈夫です。」)
  • メタファーを活用する(「波が静かになるように、あなたも落ち着いていきます。」)

この技法を使うことで、クライアントは無理なく催眠状態に入り、変化を受け入れやすくなります。まずは、日常の会話の中でミルトンモデルの言葉を使ってみることから始めてみましょう!

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