『思考の整理学』から学ぶ:指示待ちを卒業する!自律型社員へのマインドセット

仕事術

「言われたことは完璧にこなしているはずなのに、なぜか評価がパッとしない」
「新しい企画を出せと言われても、何から考えればいいのかわからない」

そんな悩みを抱えていませんか? 毎日一生懸命働いているのに、どこか「誰かに動かされている」ような感覚があるなら、それはあなたが「グライダー型」の思考に陥っているからかもしれません。

刊行から40年以上経ってもなお、東大・京大で読まれ続けている知的創造のバイブル『思考の整理学』(外山滋比古 著)。本書が説く「自ら考え、自ら動く」ための知恵は、AIが台頭する現代において、かつてないほどその重要性を増しています。

今回は、本書の核心である「グライダーと飛行機」の概念を軸に、明日から職場を自分の力で飛び回るための仕事術を記事にしてみました。

第1章:あなたは「グライダー」か、それとも「飛行機」か?

外山氏は、人間の思考タイプを2つの乗り物に例えています。

  • グライダー型:受動的に、他人の力(エンジン)に引かれて飛ぶ思考
  • 飛行機型: 自力でエンジンを回し、自分の力で飛び上がる思考

私たちは義務教育を通じて、いかに「優秀なグライダー」になるかを教え込まれてきました。教科書を読み、先生の言う通りに正解を導き出す力。これは知識の吸収には非常に効率的です。
しかし、ビジネスの現場、特に正解のない課題に直面したとき、グライダーは自力で高度を上げることができず、失速してしまいます。

「優秀なグライダー」の限界

現代の職場において、マニュアル通りに動くことや、指示されたデータを整理することは、すでにAIやシステムの得意分野になっています。つまり、「グライダーとしての能力」だけでは、あなたの市場価値は相対的に下がってしまうのです。

いま求められているのは、誰も目的地を教えてくれない空で、自ら行き先を決め、エンジンを点火して飛び立つ「飛行機型」のビジネスパーソンです。

第2章:自走するエンジンを作る「カクテル思考」の魔法

では、どうすれば「飛行機」のように自力で飛び上がるためのエンジンを持てるのでしょうか。その鍵は、本書で説かれる「カクテル思考」にあります。

ゼロから全く新しいものを生み出そうと気負う必要はありません。新しいアイデアや独自の視点とは、実は「既存の知識と、全く異なる分野の知識が混ざり合ったもの」だからです。

 異質なものを混ぜ合わせる

一つの専門分野だけに閉じこもっていると、思考は硬直化し、グライダー化が進みます。一方、飛行機型の人間は、自分の業務とは無関係に見える「わき道」の知識を大切にします。

  • 営業のスキル × 心理学の知見
  • エンジニアの論理的思考 × 芸術鑑賞で養った感性
  • 事務作業の効率化 × 趣味のゲームで学んだ攻略法

このように、異なる要素をシェイクして自分だけの「カクテル」を作ることで、他人には真似できない独自の提案(=エンジン)が生まれます。

仕事に関係のない読書や趣味、異業種の人との雑談を「無駄」だと切り捨てないでください。それこそが、あなたが自力で飛び立つための燃料になるのです。

第3章:明日から実践!「飛行機型」に変わる3つの具体アクション

マインドセットを変えるのは一瞬ですが、定着させるには具体的な行動が必要です。明日から職場で実践できる3つのステップを紹介します。

1. 会議の前に「自分の仮説」を1分だけ作る

グライダー型の人は、会議に「何が決まるのかな」と受け身で参加します。飛行機型になるためには、アジェンダを見た瞬間に、「自分ならこうする」という仮説を1つだけ持ってください
たとえそれが間違っていても構いません。自分なりの答えを持って臨むことで、会議中の情報の吸い取り方が劇的に変わり、発言に主体性が宿ります。

2. 「なぜ、このルールなのか?」を疑ってみる

マニュアルや慣例に従う際、ただこなすのではなく「なぜこの工程が必要なのか?」「これを省いたらどうなるか?」と一歩踏み込んで考えてみてください。
「前任者がそうしていたから」という理由以外が見つからないなら、それはあなたが改善案というエンジンを回すチャンスです。

3. 「小さなアウトプット」を習慣にする

インプット過多は思考を重くします(知的メタボの状態)。学んだことや気づいたことは、チャットツールでの共有や、メモ書き、あるいは同僚へのちょっとした話として、すぐに外に出しましょう。
「出す(排泄)」ことで初めて、脳は新しいことを考える「余白」を手に入れます。

 まとめ:自分でエンジンを回す楽しさを手に入れよう

『思考の整理学』が私たちに教えてくれるのは、「思考の自由」です。

誰かに引っ張られて飛ぶグライダーは、楽に見えますが、行き先を選ぶことはできません。一方で、自分でエンジンを回す飛行機は、最初は離陸にエネルギーを使い、孤独を感じることもあるでしょう。しかし、一度高く飛び上がれば、誰よりも遠く、自分の好きな景色を見に行くことができるのです。

「今の仕事は指示ばかりで面白くない」と感じているなら、それはあなたが飛行機として羽ばたく準備ができている証拠かもしれません。

明日、出社したらまず一つ、指示される前に「自分ならこうしたい」と口に出してみませんか? その小さな一歩が、あなたのビジネス人生を大きく変える離陸の瞬間になるはずです。

 次のステップへのご案内

いかがでしたでしょうか? 今回は「マインドセット」に焦点を当てましたが、実はこの「飛行機型」の思考を維持するためには、「あえて考えない時間を作る」という逆説的なテクニックも重要になります。

もしご興味があれば、次は**「第2回:アイデアを熟成させる『寝かせる』技術」**について、具体的なスケジュール管理術を交えて解説することも可能です。続けて作成しましょうか?

 

参考書籍:外山滋比古 著『思考の整理学