職場でも、家庭でも、あの人とは何か噛み合わないなあ、と感じることはありませんか?
こちらが一生懸命伝えようとしても、伝わらないし、
相手も理解しようとしてくれない。
会話の中身がいつもズレてしまって、結論まで進まない…
こういうパターンで意外に多いのではないでしょうか?
つまり、ミス・コミュニケーションが今、その場で起きているんです。
この記事を読むことで、その原因と対策が理解できるようになります。
例えば、「海」と聞いて、どのようなことを思い出しますか?
大きく青く広い海、水平線、波の音、しょっぱい味、海水浴、水着、ナンパ…
「海」という単語ひとつとっても、人によって持っているイメージは全く違います。
実は、単語によるイメージの違いが、そのまま、会話の中での意図のズレになってしまうのです。
あなたが、伝えたかったことがうまく伝わらないこと、そして、その逆もしかりですが、その原因と対策は、必ず知っておくべきことです。
NLP心理学では、このミス・コミュニケーションの仕組みが、一番最初に作られました。
それは、二人の天才的な心理療法家が、ある決まった型の質問をしていることを発見し、分析しました。
相手の経験を、より具体的に理解するための情報収集のための質問です。
話し手が、体験を言語化する際、その言葉がどういった意味を持っているのかを、質問によって具体化したり、明確にしていきます。
それは、言葉によるコミュニケーションをできる限り完全なものにするためです。
相手にとっての理解している言葉の意味は、ある意味、なにかしらの思い込みである場合が多く、質問によって区別していくのです。
この質問を行うことで、ミス・コミュニケーションが仕事でも家庭でも劇的に減っていくはずです。
これがメタモデルです。
1、ミス・コミュニケーションの原因
ミス・コミュニケーションとは、言葉を発した本人と受け取る人の解釈にずれが生じることをいいます。
私たちは会話をするとき、体験しているすべての情報を伝えているわけではなく、その中からいくつかの言葉を選択したり、自分にとって表現しやすい言葉をつかって表現しようとします。
例えば、あなたが休日に海水浴に行って、知人に「海に行ってきたよ」と伝えた場合ですが、現実的には、いろいろな体験をしているはずなのですが、会話を成立するために様々な情報をそぎ落としたり、少し歪めたりしながら、シンプルな表現にしてしまうのです。
- 天気は晴れで朝8時に家族4人全員で出発、娘がだだこねて少し出発時間遅れる
- 渋滞に巻き込まれイライラMAX、車内で早弁とる、唐揚げがおいしかった
- サービスエリアでトイレ休憩する、空が気持ちいい
- 海は混雑していた、駐車場料金2000円/日だった、ムウ少し安くして
- テント張った、息子と少し沖にでた、ちょー気持ちいい、魚がいた!
などなど、いろんな体験をしているのに
「海に行ってきたよ」というシンプルな言葉に置き換わってしまいます。
図として表現すると以下のようになります。
例えば、仕事上でも
「みんな、〇〇の方が良いと言ってますよ!」という言葉を耳にしたりしませんか?
この言葉は、その人にとって「歪曲」というフィルターがかかってることが多く、事実とは違うことを相手に伝えてしまう場合があります。
全員が同じことを言っているように伝えながら、相手に自分の意見を押し付けようと思っているときに無意識的に使われる言い回しでもあります。実際は、この「みんな」とは、その人が重要だなと思っている、数人のことをを指している場合が多いのです。
こういった言い回しなどは、日常的によくあり、ミス・コミュニケーションに繋がりますし、発信者の思い込みや偏見が生まれていきます。
次に、3つのフィルター「削除」「一般化」「歪曲」と、そういう事象に遭遇した場合、どのような質問をすることによって、明確化していけるのかを、お伝えしたいと思います。
2、3つのフィルター ■省略 ■一般化 ■歪曲
ミス・コミュニケーションを防ぐ前に、まず理解して欲しいのが同じ状況にあっても人によって感覚に違いがあるということです。
ここでは、前章にてご紹介しました「削除」「一般化」「歪曲」の各パターンと、それに対する効果的な質問例などをご紹介しますので、明確化するための質問例など参考にしていただければと思います。
「省略」された言葉 | 効果的な質問 | |
不特定名詞1 | 「もっと自信がほしい」 「不安です」 「意見の相違だ」 |
具体的に教えてほしい? 誰が? 何が? 何に対して? |
不特定名詞2 | 「冬に札幌に行った」 「彼女は私を手伝った」 |
具体的に? どのように? |
比較 | 「彼の方が劣っている」 「努力が足りない」 「新しいかぜ薬はより優秀だ」 |
何と比べて? |
判断 | 「彼女の事実は明白です」 「アメリカのトレーナーは優秀だ」 |
誰が決めた? 何を基準に? 誰の判断? どのような理由で? |
名詞化 | 「家族関係に問題がある」 「有言実行は尊厳に値する行為だ」 「教育の充実が国政の基礎になる」 |
「一般化」された言葉 | 効果的な質問 | |
可能性の叙法助動詞 ※可能性を表す cannot impossible |
「私は教師になんかなれっこない」 「私は人を愛せない」 「私にはできそうもない」 |
もし出来たとしたら? 止めているものは何? |
必要性の叙法助動詞 |
「いつもニュートラルでいるべきだ」 「メタモデルを覚えなければならない」 「嘘をついてはならない」 |
もし、そうしないとどうなる? もし、そうしたらどうなる? |
普遍的数量詞 all every always never none |
「私はすべての人に嫌われている」 「一度も褒められたことがない」 「外人は誰でも英語が上手い」 「私には問題がない」 |
すべて? あらゆる? いつも? 誰でも? ひとつも~ない? 決して~ない? |
「歪曲」された言葉 | 効果的な質問 | |
等価の複合観念 | 「笑う=不真面目」 「元気がない=失恋した」 「美人=冷たい」 |
どうしてXがYを意味するの? |
前提 | 「彼はひどい人です」 「バカは風邪を引かない」 |
何があなたをそう思わせたの? どうしてそう信じたの? |
因果 | 「雨の日は気分が悪い」 「上司の声は私をイライラさせる」 |
なぜXがYの原因? |
憶測 | 「彼女の愛は冷めてしまった」 「こんなに私が尽くしているのに」 |
いったいどうしてそれが分かるの? |
以上ですが、3つのフィルターとして「省略」「一般化」「歪曲」の例として、よく使うものや活用しやすそうな質問例などを確認して、少しずつ日常性格で試してみてください。
3、メタモデルの目的
メタモデルの質問を効果的に活用するポイントは、大きく以下の4つです。
- 情報を収集する
- 言葉の意味を明確にする
- 制限しているものを発見する
- 選択の可能性を広げる
これによって、お互いのすれ違いを防ぎ、正確なコミュニケーションが図れるようになりますし、問題解決のスピードや質が上がるので、仕事上で、上司や部下とスムーズなやりとりができ、信頼されるようになります。
また、仕事でも家庭でも、誤解を減らしたり、誤解の解き方ができるため、円滑なコミュニケーションを実現することができます。
1)当たり前に人が持っている偏見や思い込みに気づいてもらうもの
メタモデルの質問は、相手の事実を明確にするだけでなく、相手の価値観にいたるまで明確にすることができるものです。
当たり前に人が持っている偏見や思い込みに気づいてもらうためのものであり、新しい認識や選択肢を生み出すことを目的にしています。
大切なことは、自分自身の考え方・ものの見方と相手の考え方・ものの見方は違うということを前提に交流を行うことです。それは、相手の世界観を尊重することでもあります。
2)WHYではなく、HOW&WHATで質問する
質問の際、注意が必要です。相手に、「なぜ(WHY)そうしたの?」というWHYで質問すると、必ず、言い訳をしてきます。「正当化」や「言い訳」を引き出しやすく、あなたに対する反発が生まれることもあります。
ですから、質問は、「何が起きているのか(HOW)?」「何があったの(WHAT)?」というオープンクエスチョンで聞くことが重要です。
相手の無意識を知る
会話の内容から本人も気づいていない本人の価値観を言葉にすることができると行動変容も早くなります。
「この人は、何を大切にしているのか?」
「この人が許せないことは何?」
「この人の本心は何? 何を伝えたがっているのか?」
「歪曲や一般化、削除されているものは何か?」
こういった言葉には表れていない、無意識の世界を理解していくことが大切です。
具体例
日常会話の中でキャッチボールされている言葉は、人によって意味の捉え方が違う・・・という、コミュニケーション・ミスが発生するということを知っておかなければいけません。
例えば・・・
- 上司:「どうして、勝手にそういうことをやるんだ!」
- 部下:「えっ、○○という意味ではなかったのですか?」
- 上司:「違うよ、それは、△△という意図があるんだよ。しっかりしてくれよ。」
- 部下:「ちゃんと次から説明してくださいよ。」
- 上司:「だから、ちゃんと説明したじゃないかっ!」
よくあるケースですね。
「そういう意味でいったんじゃないのに、どうしてわかってくれないのよ?!」
・・・実は、これが一番多いケースなのです。
つまり、情報共有が全くできていないばかりか、合意すらしていないことが、これらのコミュニケーション・ミスに繋がっているのです。
「課長の役割とは、○○○○をすることで、権限は○○○○までです。」
といったような情報を共有することなしに、それぞれが、勝手に自分の経験から推測して行動している結果が、こういう一連のコミュニケーションミスを発生させてしまうのです。
NLP心理学の世界では、これをメタモデルと呼んでいます。
相手にある言葉や指示を出すとき、その言葉の裏側にある背景や思いや感情などを、自分の頭の中で、ある程度、削除したり、一般化したり、歪曲したりして、短縮して伝えてしまうのが人間の脳の仕様であり行動なのです。
「あの人、階段から転んで怪我をしたんだって!」
実際の事実から、削除され、一般化され、歪曲された結果の言葉ですから、随分遠いものになってます。
これを回避する方法はたった一つしかありません。
それは、質問をしてギャップを埋めていくことです。
「階段ってどの高さから?」
「怪我ってどういう状況?」
「どのように落ちたの?」
・・・などのようにです。
ですから、「課長の責任」と聞いた瞬間、イメージできる責任の範囲や重さは、その人の経験したことから推測してしまうことになってしまうのです。
言葉によるコミュニケーションで、こういうモデルが存在するということを、社長や社員が常識として知っておき、質問力を身につけるという文化が社風に芽生えているとしたら、問題は簡単に解決していきます。
さっきの課長ですが、上司から、
「それくらい課長の仕事だろう?」と言われたとき・・・
- 「この会社の課長の役割、つまりミッションや権限を教えていただけますか?」
- 「いや・・・・はっきりとは、ないような・・・」
- 「もし、まだないようであれば、至急作って合意しておきたいのですが。そうすることで、よりスムーズに業務が遂行できると思います。」
お互いが意識していることを言葉で補っていく。
すばらしいと思いませんか!
4、まとめ
ミス・コミュニケーションが原因でトラブルになってしまうのは意外と多いものです。
私たちは、言葉で情報を表現しようとするときに、削除、一般化、歪曲といったフィルターをとおして表現しようとします。これがミス・コミュニケーションの原因です。
その3つのフィルターを理解し、正確にコミュニケーションをとるために、メタモデルを活用してください。