「やらなきゃいけないのはわかっているのに、どうしても体が動かない」
「仕事の資料作成、勉強の参考書……。目の前にあるのに、別のことばかりしてしまう」
やる気が出ない自分に対して、「自分は意志が弱い」「怠慢だ」と責めてはいませんか? 実は、やる気が出ないのはあなたの性格のせいではなく、単に脳への「スイッチの入れ方」を知らないだけなのです。
NLP心理学の視点から、脳のメカニズムを味方につけて、自然と体が動き出すためのアプローチを解説します。
1. なぜ「やる気」は消えてしまうのか?:脳の防衛本能を知る
やる気が出ないとき、私たちの脳内では「やりたい(意識)」と「やりたくない(無意識)」が激しく衝突しています。
「二次利得」というブレーキ
NLPには「二次利得(セカンダリー・ゲイン)」という考え方があります。やる気が出ない状態を維持することで、実はあなたの無意識が「何かを得ている」あるいは「何かを避けている」という現象です。
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具体例:
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仕事が進まないことで、「失敗して評価が下がる恐怖」から逃げている。
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勉強を始めないことで、「遊んでいたい」という欲求を満たしている。
まずは、「やる気が出ないことで、自分は何を守ろうとしているのか?」と自分に問いかけ、その「ブレーキ」の存在を認めてあげることが第一歩です。
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2. 解決策①:大きな塊を崩す「チャンクダウン」
やる気が起きない最大の原因の一つは、「目標が大きすぎて、脳が処理しきれていない(オーバーフロー)」ことです。
人は、ゴールが遠すぎたり手順が複雑すぎたりすると、無意識に「苦痛」を感じて避けるようになります。これを防ぐのが「チャンクダウン(細分化)」です。
実践のコツ:バカバカしいほど小さく分ける
「資料を完成させる」という大きな塊ではなく、「PCの電源を入れる」「ファイル名をつける」というレベルまで分解します。
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仕事の例: 「企画書を書く」→「まずは白紙のWordを開く」→「タイトルだけ入力する」
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勉強の例: 「英語を1時間勉強する」→「参考書を机に出す」→「単語を1つだけ覚える」
脳は「これくらいならすぐできる」と判断した瞬間、ドーパミンを放出し、次の動作へとスムーズに移行できるようになります。
3. 解決策②:感情を先取りする「VAKの活用」
「やらなければならない(MUST)」という思考は脳を疲れさせます。やる気を引き出すには、「やり終えた後の快感(WANT)」を五感でイメージすることが有効です。
NLPの「VAKモデル」を使って、達成後の自分を鮮明にイメージしてみましょう。
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視覚(V): 仕事が片付き、スッキリしたデスクや、上司が満足そうに頷く表情を思い浮かべる。
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聴覚(A): 「お疲れ様!助かったよ」という声や、終業後の帰り道で聴く好きな音楽を想像する。
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体感覚(K): 全身の力が抜け、達成感で胸が満たされる感覚や、お風呂に浸かったときの解放感を味わう。
このように「終わった後のご褒美(快感)」にフォーカスすることで、脳は「不快な作業」を「快感へのプロセス」として再認識し始めます。

4. 解決策③:動作でスイッチを入れる「アンカリング」
やる気とは「湧いてくるのを待つもの」ではなく「物理的に作り出すもの」です。
特定の動作やきっかけによって、一瞬で集中モードに切り替える手法を「アンカリング(条件付け)」と呼びます。トップアスリートが試合前に行うルーティンと同じ原理です。
自分だけの「やる気スイッチ」を作る
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香りのアンカー: 仕事を始める前に、必ず特定のコーヒーの香りを嗅ぐ、またはアロマを焚く。
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動作のアンカー: デスクに座ったら一度だけ深く深呼吸をして、軽くこぶしを握る。
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場所のアンカー: 「この椅子に座ったら仕事以外はしない」と決め、スマホは別の部屋に置く。
これを繰り返すと、脳がその「きっかけ」と「集中状態」をリンクさせ、動作をするだけで勝手にやる気が湧いてくるようになります。

補足:NLP式:自分だけの「やる気スイッチ」作成ワークシート
やる気を「待つ」のではなく、物理的なスイッチで「作り出す」ためのアンカリング(ルーティン)作成ワークシートを作成しました。以下のワークシートを埋めることで、あなた専用の「集中モードへの入り口」を設計できます。
STEP 1:呼び出したい「状態」を決める
あなたが仕事や勉強を始める際、どのような感覚でいたいですか?
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(例:冷静な集中力、溢れる自信、没頭している感覚、軽やかな足取り)
【記入欄】: __________________________________________________
STEP 2:最高の瞬間を「五感」で思い出す(VAK)
これまでに、STEP 1で書いた状態を完璧に感じられた瞬間を一つ選んでください。その時の情景を鮮明に再現します。
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視覚(V): 何が見えますか?(周りの景色、光、色、自分の姿勢など)
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聴覚(A): 何が聞こえますか?(周囲の音、誰かの声、自分の心の声など)
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体感覚(K): どんな感覚ですか?(胸の鼓動、体の軽さ、温度、重心など)
STEP 3:スイッチとなる「動作(トリガー)」を決める
その状態を一瞬で呼び出すための、日常的すぎない「独自の動き」を決めます。
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(例:右手の親指と人差し指をくっつける、耳たぶを触る、深呼吸して「よし」と呟く)
【記入欄】: __________________________________________________
STEP 4:リンク(条件付け)させる
以下の手順を5回〜10回繰り返してください。
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目を閉じ、STEP 2の「最高の瞬間」を五感でリアルに思い出す。
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感情の盛り上がりがピークに達する直前で、STEP 3の「動作」をギュッと行う。
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動作を解き、一度目を開けて深呼吸する(リセット)。
STEP 5:明日からの実行プラン
このルーティンを、いつ、どのような状況で使いますか?
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(例:デスクに座ってPCの電源を入れた直後に行う)
【記入欄】: __________________________________________________
5. それでも動けないときは…「5分だけルール」
どうしてもやる気がゼロのときは、自分と「5分だけやる」という契約を結んでください。
実は、やる気を司る脳の「側坐核(そくざかく)」は、実際に体を動かし始めないと活性化しないという性質があります。
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5分だけ本を開く。
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5分だけメールを返す。
一度動き始めると、脳は「せっかく始めたからもう少し続けよう」という「作業興奮」の状態に入ります。気づいたときには、あんなに重かった体が嘘のように軽くなっているはずです。
まとめ:やる気は「設計」できる

やる気が出ないのは、あなたがダメだからではありません。脳が現状維持を望んでいるか、目標が適切に整理されていないだけです。
- ブレーキ(二次利得)の正体を知る
- 作業を極限まで小さく分ける(チャンクダウン)
- 達成後の快感を五感で描く(VAK)
- 自分だけのスイッチ(アンカリング)を押す
まずは今日、「5分だけ、一番小さなこと」から始めてみませんか? あなたの脳は、その最初の一歩を待っています。



