仕事において、「もっとスムーズに意見を通したい」「頑固な相手とも打ち解けたい」と感じることはありませんか?
実は、プロのコミュニケーションの達人たちは、相手を意図的に「トランス状態(変性意識)」へと導くことで、相手の警戒心を解き、こちらのメッセージを受け入れやすい土壌を作っています。「催眠」と聞くと少し驚かれるかもしれませんが、これは日常のビジネス会話の中でごく自然に、かつ強力に活用できる心理技術です。
今回は、短時間で相手の心を開き、深い納得感を生み出すための具体的なポイントを解説します。
「意識と無意識、催眠」については、前回記事をご参考にしてください↓
1. ビジネスにおける「催眠(トランス)」とは何か?
ビジネスにおけるトランス状態とは、眠らせることではありません。相手の意識が外側(批判や疑い)ではなく、内側(自分の感覚やイメージ、可能性)に深く集中している状態を指します。
例えば、誰かの熱いプレゼンに引き込まれて時間を忘れたり、上司との深い対話で「よし、やってみよう」と内側からエネルギーが湧いてきたりする瞬間。それも一つのトランス状態です。
この状態を作ることができれば、相手の「意識の門番」がリラックスし、あなたの提案が相手の無意識へストレートに届くようになります。
2. 短時間でトランス状態を作り出す3つのステップ
相手をこの「心地よい集中状態」へ導くには、以下の3つのプロセスが重要です。
ステップ①:ペースを合わせ、生理的な安心感を作る(ペーシング)
人は、自分とリズムが合う人に安心感を覚え、無防備になります。
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声のトーンを落とす: いつもより少しだけ低めの声で、ゆっくりと話します。低音は安心感と権威を感じさせ、意識を落ち着かせる効果があります。
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呼吸を合わせる: 相手の呼吸のリズムに自分の呼吸を合わせます(ペーシング)。これだけで、言葉を超えた「この人は自分と同じだ」という無意識のシグナルが伝わります。
ステップ②:否定できない事実を重ねる(ペーシング・カレント・リアリティ)
相手の意識の検閲(チェック)をパスするために、「100%その通りだ」と思える事実を言葉にします。
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具体例: 「今、私たちはこの会議室に座って……(事実)」 「私の話を聞きながら……(事実)」 「これからのプロジェクトについて考えています……(事実)」
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効果: 3つほど事実を重ねると、相手の脳内では「Yes(その通り)」という反応が繰り返されます。すると、その直後にあなたが言う「そして、リラックスして新しいアイデアを想像してみてください」という**誘導(提案)**に対しても、脳が「Yes」と反応しやすくなるのです。
ステップ③:体感覚に意識を向けさせる(インワード・フォーカス)
意識の焦点を外側の「論理」から、内側の「感覚」へと移動させます。
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具体例: 「このプロジェクトの成功を思い浮かべたとき、体の中でどんなワクワクを感じますか?」 「今の私の声を聞きながら、肩の力が少しずつ抜けていくのを感じてみてください」
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効果: 自分の体の感覚に注目している間、人は論理的な批判(「でも、予算が……」など)をしにくくなります。この隙に、肯定的な暗示や提案を届けるのがコツです。
3. 明日から使える!応用テクニック:ダブルバインド
NLP催眠の代表的な手法に「ダブルバインド(二重拘束)」があります。これは、相手に選択権を与えつつ、どちらを選んでも「トランス」や「望む結果」に向かうように設計された問いかけです。
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トランスへの誘導例: 「目を閉じてリラックスしてもいいですし、目を開けたまま私の話に集中していただいても構いません(どちらにせよ、私の話に集中することになる)」
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ビジネスの交渉例: 「今すぐこの案を進めるのが良いでしょうか? それとも、明日改めて具体的なスケジュールを詰めるところから始めましょうか?(どちらにせよ、進めることが前提になる)」
このように、相手の「自由意志」を尊重しながら、目的地へと優しくエスコートするのが、洗練されたトランス誘導の本質です。
4. 【事例】頑固なクライアントの心を溶かすプロセス
例えば、新しい提案に対して否定的なクライアントと対峙したとき。
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観察: 相手の速い呼吸と、組んだ腕に注目します。
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同調: あなたも少し背筋を伸ばし、相手の呼吸に合わせてゆっくり話し始めます。
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事実の提示: 「〇〇様、本日はお忙しい中、こうしてお時間をいただき(事実)、この資料を手に取ってくださり(事実)、会社の将来のために真剣にご検討いただいていること(事実)、心から感謝いたします」
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誘導: 「その真剣な思いを大切にしながら、もし、この新しいシステムが現場の負担を半分に減らしている1年後の姿を、少しだけ想像していただけませんか?(内面への誘導)」
このように段階を踏むことで、相手の「拒絶の壁」は、いつの間にか「未来への探求心」へと変わっていきます。
5.短時間でトランス状態を作り出す<強力版>
短時間でトランス状態を作り出すポイントは、混乱を作り出すこと、です
それは、人間は混乱するとトランス状態になるからです。そして、意識がフリーズした状態になり、意識の壁が壊れやすくなります。結果として、意識の検閲が入らず、直接、無意識に物事の判断を委ねるようになり、効果的な変化を作り出しやすくなります。
混乱によるトランス
トランス状態に入りやすくするために、相手の意識を混乱させる方法の例です。
- 返答不可能な質問
- 関係のない質問
今の観点とは全く違った観点の質問をする - 卑猥な質問
本能的なものにつながるという意味で使用 - 従来のパターンを覆す行動
握手するふりをして耳元で囁く、など - モダリティの変更
音を色で見る 色を感覚で感じる - 圧倒的な情報を与える
人は意思で処理できないほどの情報に直面するとトランス状態に陥り焦点を内側に向け無意識にアクセスし情報を処理しようとする。
トランス状態を活用する際の基本的なポイント
トランス状態を活用する際の基本的なポイントは、脱出口を示すということと接続詞の活用、などがあります。ポイントは、望ましい状態に誘導するための方向性を作るということです
- 脱出口を示す
トランス状態に入った場合、何らかの混乱が原因となっている可能性があります。つまり、埋めるのが難しい空白を持ってしまったがために、脳の中の検索機能が意識から無意識に変更されていると考えられます。この状態の時、脳は空白を埋めることを渇望しています。
そして、強く何かを渇望しているとき、人間は判断機能が低下し、自分の問題を解決してくれるものに飛びつこうとする傾向があります。よって、脱出口を示すとその方向に相手が進んでいく可能性が高まります。 - 接続詞の活用
1. そして
2. ~しながら
3. ~だから~なのです - 接続詞の後に相手に望む変化をつなげる
「そして…」を使った表現例:「あなたは、この文章を読んでいます。そして…自分の生活の変化について考えます。そして…それを考えながら、あなたはリラックスして、眠たくなり、そして…あなたは、その気持ちを感じることができます。その気持ちを感じながら、あなたの生活にあなたが望んでいる変化をもたらし、気がついたらそのリラックスした感覚が深まっていくことを感じることができます。そして…あなたにタバコをやめさせているでしょう。」



