効果的な質問①:コーチングの基本マインド:部下の脳を「解決モード」に!

コミュニケーション術

何度言っても、部下が自分で考えて動いてくれない……」 「トラブルが起きると、言い訳ばかりが返ってくる……」

リーダーやマネジャーの方なら、一度はこうした壁にぶつかったことがあるはずです。しかし、部下が動かないのは、彼らの能力ややる気の問題だけではないかもしれません。実は、あなたが投げかけている「質問の質」が、部下の脳をフリーズさせている可能性があるのです。

コーチングの第一歩は、スキルを覚えることではなく、質問によって相手の脳の「向き」を変えるマインドセットを持つことにあります。

1. 「考える」の正体は、脳内での「検索」である

上司がよく口にする「よく考えろ!」という言葉。言われた側は、具体的に何をすればいいのかわからず、プレッシャーだけを感じてしまいます。

心理学的に見れば、「考える」という行為は、自分自身に質問を投げかけ、その答えを脳のデータベースから「検索」することです。

  • 質の低い質問を投げれば、脳は言い訳や後悔を検索します。

  • 質の高い質問を投げれば、脳は解決策や可能性を検索します。

つまり、リーダーの役割は、部下の脳が「解決」というフォルダを検索し始めるような「検索ワード(質問)」を渡してあげることなのです。

2. 脳をフリーズさせる「問題フレーム」の罠

多くのリーダーが陥りがちなのが、問題が起きた時に「原因追及(なぜ?)」ばかりをしてしまうことです。これをNLP(神経言語プログラミング)では「問題フレーム(Problem Frame)」と呼びます。

なぜ「なぜ?」は危険なのか

トラブル時に「なぜ、こんなミスをしたんだ?」と問うと、部下の脳内では何が起きるでしょうか。

  1. 過去への執着: すでに変えられない過去の失敗に意識が固定される。

  2. 自己防衛: 責められていると感じ、脳が「叱られないための言い訳」を最優先で検索し始める。

  3. 萎縮: 思考がネガティブな方向へ向き、新しいアイデア(解決策)が出なくなる。

原因分析はもちろん重要ですが、「原因がわかれば解決する」とは限りません。 むしろ、原因探しに終始することで、現場の空気は重くなり、部下は「次から怒られないようにしよう」という消極的な姿勢になってしまいます。

3. 脳を活性化させる「解決フレーム(アウトカムフレーム)」

一方で、できるリーダーは意識を「過去の原因」から「未来の目的」へとシフトさせます。これを「解決フレーム(Outcome Frame)」と呼びます。

「何が起きたか」以上に「これからどうしたいか?」に光を当てるアプローチです。

解決フレームへ切り替える「質問の変換表」

明日から、部下への問いかけを以下のように変えてみてください。これだけで、会話の質が劇的に変わります。

状況 問題フレーム(NG例) 解決フレーム(OK例)
ミスが発生した時 「なぜミスをしたんだ?」 何があれば、次は防げるかな?」
進捗が遅れている時 「どうして遅れているんだ?」 どうすれば、予定に追いつける?」
意見が出てこない時 「何が問題だと思う?」 本当は、どういう状態が理想?」
行き詰まった時 「何が足りないんだ?」 今あるリソース(武器)で何ができる?」

【ポイント】

「なぜ(Why)」を「何(What)」や「どのように(How)」に置き換える。これだけで、脳は自然と「解決に向けた検索」を開始します。

4. コーチとしてのマインド:評価者ではなく「並走者」になる

コーチング的な質問を機能させるために最も大切なのは、質問のテクニック以上に、あなたの「スタンス(構え)」です。

質問を投げかける時、心の中で相手をジャッジ(裁く)していませんか?

「なんでこんなこともできないんだ」という不満を持ったまま質問すると、言葉は丁寧でも相手には「攻撃」として伝わります。

コーチの基本姿勢

  • 可能性を信じる: 「この部下は、必ず解決策を見つける能力がある」と仮定して問う。

  • 答えを教えない: あなたが答えを言ってしまうのは、部下の「検索能力」を奪う行為です。

  • 沈黙を待つ: 質問した後、部下が黙り込んだら、それは脳が一生懸命「検索」している証拠です。その沈黙を笑顔で待ってあげてください。

まとめ:明日から使える「最初のアクション」

今日から、部下との対話で「なぜ?」という言葉を一度封印してみましょう。

その代わりに、「何があればうまくいく?」「具体的に、どう進めたい?」という問いを投げかけてみてください。部下が自分の口から「こうしてみます」と解決策を話し始めたら、それが彼らの脳が「解決モード」に切り替わったサインです。

次のステップ:

マインドセットが整ったら、次は具体的な対話の流れです。次の記事では、誰でも迷わずコーチングが進められる「GROWモデル」を活用した実践テクニックを解説します。