「アクセルを踏んでいるのに、なぜか前に進めない」というもどかしさを解消し、本来のパフォーマンスを発揮するためのガイドです。
「新しいプロジェクトに立候補したいのに、なぜか一歩踏み出せない」
「もっと積極的に提案すべきだとわかっているのに、会議で口を閉ざしてしまう」
「期限が迫っているのに、重要度の低い仕事ばかりに手をつけてしまう」
こうした状態は、車に例えるなら「アクセルを目一杯踏み込みながら、同時にサイドブレーキを強く引いている状態」です。エンジン(やる気)には負荷がかかり、心身ともに消耗しているのに、現実の成果は全くついてきません。
NLP(神経言語プログラミング)では、このブレーキの正体を解き明かし、優しく解除していく手法があります。この記事では、あなたの行動を止めている「心理要素」を特定し、明日から軽やかに動けるようになるためのステップを解説します。
1. 心理的ブレーキの正体は「肯定的な意図」である
まず知っておいてほしいのは、「あなたのブレーキとなっている心理要素は、あなたを困らせようとしているのではない」ということです。
NLPの前提の一つに、「すべての行動には肯定的な意図がある」という考え方があります。あなたを止めているそのブレーキ(不安、恐怖、怠惰感など)は、実は「あなたを何かから守ろうとしている」のです。
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失敗したくない: 「恥をかくことからあなたを守りたい」
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動きたくない: 「過労で倒れるのを防ぎたい」
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自信がない: 「高い期待を背負って潰れてしまうのを防ぎたい」
ブレーキを無理やり引きちぎろうとすると、心はさらに強く抵抗します。大切なのは、ブレーキが持っている「守りの目的」を理解し、味方に変えることです。

2. 【具体例】あなたの仕事を止めている3つの「ブレーキ」
よくあるビジネスシーンで、どのようなブレーキが働いているのかを見てみましょう。
事例A:完璧主義というブレーキ(資料作成が進まない)
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状況: 企画書の作成を後回しにしてしまう。
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表面上の理由: 「やる気が出ない」「忙しい」
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隠れたブレーキの声: 「完璧なものを出さないと、無能だと思われるぞ。失敗するくらいなら、手をつけないほうが安全だ。」
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肯定的な意図: 「あなたの評価(自尊心)を守りたい」
事例B:遠慮・萎縮というブレーキ(上司に意見が言えない)
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状況: 会議で良いアイデアがあるのに、黙ってしまう。
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表面上の理由: 「まだ考えがまとまっていないから」
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隠れたブレーキの声: 「生意気だと思われたら、チームでの居場所がなくなるかもしれないぞ。波風を立てないのが一番だ。」
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肯定的な意図: 「あなたの居場所(安全)を確保したい」
事例C:現状維持というブレーキ(新しい挑戦ができない)
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状況: スキルアップのための勉強や転職を考えているが、実行できない。
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表面上の理由: 「時間がない」「お金がかかる」
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隠れたブレーキの声: 「今のままでも生活はできている。新しいことを始めて失敗したら、今の安定さえ失うぞ。」
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肯定的な意図: 「今の安定した生活(生存)を維持したい」

3. 実践!ブレーキを味方に変える「4ステップ・ワーク」
NLPの「シックス・ステップ・リフレーミング」のエッセンスを取り入れた、自分で行えるワークです。
Step 1:ブレーキを「擬人化」する
あなたを止めている感覚(胸のつかえ、重い気分など)に注目し、それを「一人のキャラクター」のようにイメージします。「慎重な秘書」や「怖がりの子供」など、名前をつけても構いません。
Step 2:その「目的」を尋ねる
そのキャラクターに、心の中で問いかけます。
「私を止めることで、私にとってどんな良いこと(メリット)を与えようとしてくれているの?」
答えは直感で受け取ってください。多くの場合、「安心」や「安全」というキーワードが出てきます。
Step 3:感謝を伝え、別の方法を提案する
「私を守ろうとしてくれて、ありがとう」と一度感謝します。その上で、こう提案します。
「あなたの『安全を守りたい』という目的はそのままに、今の私を止めずに、他の方法でその目的を果たすことはできないかな?」
Step 4:新しい「行動案」を合意する
脳に新しい選択肢を出させます。
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「完璧を目指さず、まずは『下書き』として上司に見せて、フィードバックをもらうことでリスクを減らすのはどう?」
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「会議の最後に、質問という形で意見を添えることから始めるのはどう?」
キャラクターが「それならいいよ」と納得する感触があれば、ブレーキは外れ始めます。

4. 明日から実践できる「ブレーキ解除の習慣」
大きなワークをする時間がない時でも、以下の2つを意識するだけで効果があります。
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「でも」を「同時に」に変える
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×「やりたい、でも怖い」
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○「やりたい、と同時に、私は自分の身を守ろうと慎重にもなっている」
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言葉を変えるだけで、対立が緩和されます。
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ブレーキに名前をつけて挨拶する
朝、モヤモヤしたら「あ、慎重派の僕が出てきたね。今日も僕を守ろうとしてくれてありがとう。でも今日は少しだけ前に出るから見守っていてね」と声をかけます。
5. まとめ:ブレーキを外した時、本来の加速が始まる
自分の中にあるブレーキを「敵」だと思って排除しようとする限り、内面的な葛藤(戦い)は終わりません。
しかし、そのブレーキが「あなたを愛し、守ろうとしてくれている一部」だと気づいた時、葛藤は消え、全てのエネルギーが同じ方向(目標)へと向かい始めます。
明日、あなたが何かをためらった時。
それはブレーキを壊すチャンスではなく、自分自身の「肯定的な意図」と対話し、より賢い進み方を見つけるチャンスなのです。
「働く人のコミュニケーション学」では、あなたの内なる味方を増やし、キャリアを加速させる心理学の知恵を共有しています。


