「良い質問ができた気がするけれど、部下は本当に動いてくれるだろうか……」 「コーチングの効果を、どうやって評価すればいいのかわからない」
コーチングを学び始めたリーダーが必ずぶつかるのが、この「手応え」の不安です。実は、コーチングの成否は、会話の盛り上がりや相手の「納得感」だけでは測れません。
最終回となるこの記事では、コーチングの成果を客観的に見極めるための「3つの指標」と、あなた自身のコーチングスキルを磨き続けるための「振り返り術」を解説します。
1. 良い質問の正体は、相手の「行動」が決める
コーチングにおいて「質の高い質問」とは、単に言葉が洗練されているものではありません。「相手の行動に何らかの変化をもたらした問い」こそが、最も価値のある質問です。
極論を言えば、どんなに沈黙が長くても、どんなに不格好な問いかけであっても、その対話の後に部下が「今までと違う一歩」を踏み出したのであれば、そのコーチングは大成功なのです。
2. 成果を見極める「3つの行動指標」
コーチングの後、部下の様子を観察する際にチェックすべき指標が3つあります。
① 行動を起こしたか(Start)
最も分かりやすい指標です。対話の中で決めた「最初の一歩」を、期限内に実行したかどうかを確認します。
-
チェック例: 「昨日話した、A社への電話はもう済ませた?」
② 行動が変わったか(Change)
やり方やプロセスに工夫が見られるかどうかです。質問によって視点が切り替わると、仕事の進め方や周囲への接し方に変化が現れます。
-
チェック例: 「以前は一人で抱え込んでいたけれど、今回は早めに相談に来たな」
③ 行動を止めたか(Stop)
実は見落としがちですが、非常に重要な指標です。目標達成の妨げになっていた「無駄な習慣」や「思い込み」を手放せたかどうかを確認します。
-
チェック例: 「意味のない会議資料の作成を、思い切ってやめたようだ」

3. 「非言語情報」で質問の効果を読み取る
対話の最中にも、自分の投げかけた質問が相手の心に響いたかどうかを判断する材料があります。それは、相手の「非言語(表情やしぐさ)」の変化です。
-
「えーっと……」という沈黙: これは「良いサイン」です。相手の脳が、今までアクセスしていなかった深い場所を探っている証拠です。焦って助け舟を出さず、じっくり待ちましょう。
-
目が泳ぐ、上を見る: NLP(神経言語プログラミング)では「アイ・アクセシング・キュー」と呼ばれますが、視線が動くのは脳が情報を検索している状態です。
-
声のトーンや姿勢の変化: 「あ、そうか!」と声が弾んだり、前のめりになったりした瞬間、あなたの質問が相手のエネルギーを引き出したと言えます。
4. 【保存版】コーチ自身の振り返りチェックリスト
自分自身の質問力を高めるために、面談の後にセルフチェックを行いましょう。以下の5項目を振り返るだけで、次回のコーチングの質が劇的に上がります。
-
「なぜ(Why)」を「何(What)」に変換できたか?
-
相手を問い詰めず、未来に意識を向けられたか。
-
-
相手よりも自分が長くしゃべっていなかったか?
-
コーチの役割は「聞く:問う」が「8:2」が理想です。
-
-
相手の言葉をそのまま使って返したか?(バックトラッキング)
-
自分の解釈を入れず、相手の価値観を尊重できたか。
-
-
「他には?」と、可能性を掘り下げたか?
-
最初の答えだけで満足せず、もう一歩先を引き出したか。
-
-
最後の一歩を「具体的(いつ、何を)」に決めたか?
-
「頑張ります」という精神論で終わらせなかったか。
-
まとめ:質問力は「自分」をも変える
全3回にわたってお伝えしてきた「質問力」の技術。これは部下を育てるためだけの道具ではありません。
相手に質の高い問いを投げかけられるようになると、無意識のうちに自分自身への問いかけ(自問自答)の質も変わっていきます。 「どうしてうまくいかないんだ?」ではなく「次はどうすればもっと楽しくなる?」と自分に問えるようになった時、あなたのリーダーとしてのステージは一段高まっているはずです。
「働く人のコミュニケーション学」は、問いを通じて、あなたと周囲の人々の可能性が広がることを応援しています。
最後に: これらの記事は、一度読んで終わりではなく、実際の面談の前に見返したり、チームで共有したりして、現場での「実践」に役立ててください。
効果的な質問シリーズの最初の記事はこちらです↓




