朝、会社に向かう足が重い。 でも、「何がつらいか」と聞かれると、うまく答えられない。
ハラスメントがあるわけじゃない。 給料が極端に低いわけでもない。 仕事内容も、まあ、こなせている。
それなのに、なぜか消耗する。 なぜか、帰宅してから何もする気になれない。 なぜか、月曜の朝が、以前よりずっと重い。
この「なぜか」が言葉にならないことで、 多くの人が「自分がおかしいのかもしれない」という結論に着地してしまう。
でも、それは違う。
この記事では、「言語化できないストレス」という状態が、なぜ起きるのか、そしてどう捉えれば少し楽になるのかを、静かに整理していきます。
理由が言えないなら、たいしたことない
しんどさを人に打ち明けようとしたとき、こんな言葉が返ってきた経験はないでしょうか。
「何かされたわけじゃないんでしょ?」 「みんな同じだよ、慣れたら平気だよ」 「具体的に何がイヤなの?」
説明できなかった瞬間、黙るしかない。 そして「自分の感受性がおかしいのかも」と思いはじめる。
これは、ストレスには「言語化しやすいもの」と「言語化しにくいもの」の2種類がある、という事実が広まっていないために起きる誤解です。
「上司に怒鳴られた」「残業が週30時間を超えた」——こういったストレスは言語化しやすく、他人にも伝わりやすい。
一方で、「空気が読めない会議が毎日ある」「誰も悪くないのに自分だけ浮いている感覚がある」「なんとなく、ここにいていいのか分からない」——こういったストレスは、原因が分散していて、言葉にしにくい。
言語化できないことは、ストレスが軽いことを意味しない。むしろ、身体には正直に蓄積されていきます。
「あなたの場所」と「あなたの感覚」がずれているだけ
言語化できないストレスの多くは、「個人の弱さ」ではなく、環境と個人の特性のミスマッチから生まれます。
たとえば、こんなことはないでしょうか。
- 会議でいつも「何か意見は?」と聞かれるが、即座に言語化するのが得意じゃない。じっくり考えてから話したいのに、そのスペースがない。
- 成果が数字に出にくい種類の仕事をしているが、評価される基準は「見えやすい数字」だけ。
- 周囲がなんとなく「こういうもの」として流していることに、自分だけ違和感を感じる。
これは、「感受性が高すぎる」でも「協調性がない」でもありません。 ただ、あなたの情報処理のスタイルと、その職場の文化が、かみ合っていないというだけの話です。
人は自分の物事の感じ方を基準に他者を評価しがちです。 「みんな平気そうだから、自分がおかしい」という結論は、論理的に見えて、実はとても大雑把な判断です。
「みんな」が平気に見えるのは、適応するのが得意なタイプが多いか、消耗を表に出さないだけかもしれない。
あなたが感じているしんどさは、弱さではなく、ミスマッチの信号です。

「言えないストレス」は、身体が先に知っている
こころよりも、からだの方が正直です。
- 帰宅後、何もする気になれない
- 休日の午後になってやっと「ふつうの自分」に戻る
- 月曜の朝が、以前より明らかに重い
- 食欲の波が以前と変わった
- 睡眠が浅い、または急に眠くなる時間が増えた
これらは、「気のせい」ではなく、神経系がコストを払いすぎているサインです。
問題を言語化できなくても、身体は「ここはしんどい」と伝えようとしています。 そのサインに気づくこと自体が、「扱える状態」に戻るための最初の一歩です。
「なぜかつらい」という感覚を、「おかしな自分」の証拠ではなく、信頼できる感知能力の働きとして受け取っていいんです。
「言葉にする」ことより「観察する」ことから
無理に原因を突き止めようとしなくて、いい。
まず試してみてほしいことは、ひとつです。
今週、「あ、これだ」と思う瞬間を1つだけ探してみてください。
会議の後、なぜかどっと疲れる。 あの人と廊下ですれ違った後、なんか気分が落ちる。 あの連絡が来ると、胃が少し重くなる。
それが「言語化できない」と思っていたストレスの、輪郭のかけらです。
分析しなくていい。解決しなくていい。 ただ「あった」と認識するだけで、少し、自分との距離感が変わります。
そしてもう一つ、よかったら自分に問いかけてみてください。
「私は今、どんな場所・どんな状態のときに、少しだけ呼吸が楽になるか?」
この問いに答えるために、何かを変える必要はありません。 ただ、自分がどちらの方向を向いているかを、知るためだけに。

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