「質問攻め」と部下に感じさせてしまう上司が、気づいていないこと—問い詰めを問いかけに変える視点の話

聴く技術と質問力

部下の成長を引き出したくて、質問している。

「なぜそうしたの?」「どう考えているの?」「次はどうするつもり?」

そのつもりで聞いているのに、部下の表情がどこか固い。答えが短い。会話が続かない。

「もしかして、自分の質問の仕方が悪いのだろうか」と感じたことがある上司は、少なくない。

でも、「何がよくないのか」が、なかなか言語化できない。

この記事では、同じ「質問」がなぜ「問い詰め」に聞こえたり、「問いかけ」に聞こえたりするのか、その構造的な違いを整理していく。

技術の話をする前に、「なぜそうなるのか」を知っておくと、自分の質問を眺める目が変わってくる。

「あなたの質問が悪い」という話ではなく、「なぜそう受け取られるのか」という構造の話だ。

「質問しているのにコミュニケーションが取れない」という誤解

質問は、コミュニケーションの基本的な道具だ。

だから、「もっとコミュニケーションを取ろう」と意識した上司が、まず増やすのは質問の数になりやすい。

「もっと話を聞こうとしている」「部下の考えを引き出そうとしている」——その意図は、間違っていない。

でも、質問の量を増やすことと、相手が安心して話せるようになることは、必ずしも一致しない。

むしろ、質問の数が増えるほど、受け取る側のプレッシャーも増えることがある。

なぜか。

それは、質問という行為が持っている非対称性にある。

質問する側は「聞いている」という感覚でいる。でも、答える側は「求められている」という感覚でいる。

特に上司と部下という関係性の中では、「正しい答えを出さなければいけない」という緊張が、質問の数とともに高まっていく。

「たくさん質問すれば、たくさん話してもらえる」は、必ずしも成立しない。これが、多くの上司が最初にぶつかる誤解だ。

「問い詰め」と「問いかけ」の構造的な違い

同じ「なぜ?」という言葉でも、受け取られ方がまったく異なることがある。

これは話し方のテクニックだけの問題ではない。その質問が「何を目的に投げられているか」という構造の違いが、相手の身体に伝わっている。

問い詰めになる質問の構造

問い詰め型の質問には、「答えがすでに決まっている」という雰囲気が滲み出ていることが多い。

「なんでこうなったの?」「それで、どうするつもりなの?」「それは本当に考えた結果?」

これらは言葉の上では質問の形をしているが、受け取る側には「責めている」「試されている」「答えを正当化させようとしている」という空気として届くことがある。

問いかける側の中に「こうあるべきだ」という評価の軸が先にあって、そこへ向かって相手を誘導しようとしている——部下はそれを、言語化はできなくても、感覚として受け取っている。

問いかけになる質問の構造

一方、問いかけ型の質問には、「答えを知らない」という誠実さがある。

「どんなことを考えてこうしたの?」「今、どういう状況に見えてる?」「何があれば、もう少しやりやすくなる?」

これらは、答えが開かれている。問いかける側が「答えを持っていない」から聞いている、という姿勢が伝わる。

そこに安心が生まれる。

つまり、問い詰めと問いかけの違いは、言葉の種類ではなく「問う側が答えを持っているかどうか」という内側の状態の違いだ。

この構造を知らないまま、質問の仕方だけを変えても、相手には「同じプレッシャー」として届き続けることがある。

「引き出そう」とする意識が、かえって閉じさせる

ここで一つ、少し意外な視点を提示したい。

「部下の考えを引き出したい」という意識が強すぎることが、かえって会話を閉じさせる原因になることがある。

「引き出す」という言葉には、「相手の中に何かが既にある」「それを取り出す作業をする」というイメージが含まれている。

でも、部下の側から見ると、「引き出される対象」として扱われている感覚が生まれることがある。

言ってみれば、「探られている」という感覚だ。

善意から来ている行動が、相手に緊張を生んでいる——このズレは、意図がよいだけに気づきにくい。

では、どうすればいいか。

「引き出そう」から「一緒に考えよう」へ。

この意識の違いは、小さいようで大きい。

「一緒に考える」という姿勢で質問すると、問いの形が自然に変わってくる。「あなたはどう思うの?」ではなく、「自分はこう思うんだけど、あなたはどう見えてる?」という形になっていく。

上司が答えを一方的に求めるのではなく、同じ状況を一緒に眺めている——そういう場の空気が生まれると、部下は少しずつ話しやすくなる。

これは技術というより、「問う側の在り方」の話だ。

問いを変える前に、前提を眺める

質問の仕方を変える前に、まず自分の質問を少し眺めてみてほしい。

問い①:最近、部下に投げた質問を思い出したとき、「答えを知りたくて聞いた」ものが多いですか?それとも「相手がどう見ているか知りたくて聞いた」ものが多いですか?

前者が多い場合、問い詰め型になっている可能性が高い。どちらが悪いという話ではなく、「自分がどちらの質問をしているか」を知ることが最初の一歩だ。

問い②:部下が答えた後、「そうじゃなくて」と思ったことが最近ありますか?

もしそれが多いなら、その質問にはすでに「正解」がある。それは本質的には問いかけではなく、確認か誘導に近い。

そのことに気づいているだけで、次の質問の形は少し変わってくる。

次に読んでほしい記事

質問の仕方を変えることよりも先に、「どう聴くか」という土台が整っていないと、どんな質問も表面的なやり取りに留まりやすい。

部下が安心して話せる場を作るために必要な「聴く技術」と「質問力」を、体系的に整理した記事をこのサイトで用意している。

1on1の質を上げたい方、部下との信頼関係を少しずつ作っていきたい方に、ぜひ読んでもらいたい内容だ。

👉 部下との信頼関係に悩む人のための「聴く技術」と「質問力」完全ガイド