1on1の時間を設けた。 場所も用意した。「何でも話していいよ」とも言った。
なのに、部下は少し笑って「特にないです」と言い、沈黙が流れる。
あの気まずさを、あなたはどう処理しているだろうか。
「自分の聴き方が悪いのかな」と責めてみたり、「そういう性格なんだ」と諦めてみたり。でも、どちらもしっくりこない。
この記事では、1on1の沈黙が生まれる構造と、その意味の捉え直し方について、できるだけ静かに整理していく。
「話してくれない部下をどうするか」という技術論ではなく、なぜ沈黙が生まれるのか——その手前の話をしたい。
「話さない部下」への、よくある誤解
1on1で部下が黙るとき、多くの上司は「信頼されていないのかも」「自分の雰囲気が怖いのかも」と内側に原因を探し始める。
それ自体は悪いことではない。でも、少しズレている。
沈黙は必ずしも「拒絶」ではない。
むしろ、次のどれかである可能性の方が高い。
- 何を話せばいいかわからない
- 話してもどうせ変わらないと思っている
- 「正解の答え」を探そうとしている
- 単純に、言葉にするのに時間がかかるタイプ
つまり、沈黙は「心を閉ざしている」サインではなく、「まだ言語化できていない」状態のサインであることが多い。
この違いは、思っている以上に大きい。
拒絶だと思えば、どうにかして「開かせよう」とする。でも、言語化の途中だと思えば、そっと「待てる」。
上司側の解釈がどちらかで、場の空気は全然違うものになる。
沈黙が生まれる構造の話
部下が話さない理由を「性格」にしてしまうと、何も変えられなくなる。
だが実際には、これは構造の問題だ。
1on1という場には、見えない非対称性がある。
評価する側とされる側。指示する側と従う側。その関係性が日常的に積み重なっているところに、突然「何でも話して」という場が設けられる。
部下の側から見ると、これはかなり難しい。
「何を言っても記録に残るかも」「不満を言ったら関係が悪化するかも」「気の利いたことを言わないといけない気がする」
こういった心理的な計算は、意識的に行われているわけではない。でも、身体はちゃんと反応している。
だから、沈黙は「あなたへの抵抗」ではなく、「関係の非対称性への自然な反応」と見た方が正確だ。
同じ人間が、同じテーマを、友人と話すときには雄弁に語ることがある。それは相手が違うからではなく、「構造」が違うからだ。
これを理解するだけで、少し楽になれる上司の方がいる。

沈黙を「意味のある間」に変える1つ目の視点
では、どうすればいいか。技術の話をする前に、まず視点の話をしたい。
沈黙を「埋めなければいけないもの」と感じている限り、1on1は消耗する場になる。
でも、沈黙を「考えている証拠」と受け取れた瞬間、場の質が変わる。
実際、人は本当に大切なことを話すとき、一度黙る。言葉を選ぶ。間が生まれる。
会話の中に「間」があることは、むしろ深さの表れだ。
それをあなた自身が安心して受け取れるようになると、部下の側にも「急がなくていいんだ」という感覚が伝わっていく。
言葉で伝えなくても、場の空気はこちらの状態を映している。
沈黙が気まずくなるのは、どちらかが「埋めなければ」と焦っているときだ。その焦りが伝播して、相手も身構える。
逆に、「待てる人」の前では、不思議と言葉が出てくることがある。
沈黙に耐える、というより、沈黙を信頼する。その感覚に近い。
今日から試せる、残り2つの視点
ここでは、行動の提案ではなく、内省のための問いを二つ置いておく。
問い①:あなたは1on1の沈黙を、何秒で「埋めよう」としていますか?
3秒か、5秒か、それとも1秒も待てていないか。
自分がどれくらい「沈黙を怖れているか」に気づくことが、最初の一歩になる。
問い②:「この沈黙は何を意味しているだろう」と、一度でも考えたことがありますか?
「困っている」なのか、「考えている」なのか、「傷ついている」なのか。
沈黙にはそれぞれ質感がある。その違いに気づこうとするだけで、関わり方は変わっていく。
技術は、この後についてくる。
まず「見方」が変わらないと、どんなテクニックも表面的なものになってしまう。

次に読んでほしい記事
1on1の沈黙を扱えるようになるために必要なのは、「どう話させるか」のテクニックではなく、「どう聴くか」という土台だ。
質問の仕方、間の取り方、相手が安心して話せる場の作り方。
それらを体系的に整理した記事を、このサイトでは用意している。
「聴く」ことに苦手意識がある方や、1on1をもっと意味のある時間にしたいと感じている方は、こちらも読んでみてほしい。


