カウンセリングと日常会話の違い

心理カウンセリングと普通の会話には、いくつかの違いがあります。

まず、カウンセリングでは、カウンセラーは聞き手に徹することが重要です。

つまり、話を聞くことに集中し、自分の話や意見を主張することはありませんが、普通の会話では、両者がお互いに話をすることが期待されます。

また、カウンセリングでは、話す内容に対して深い理解を示すことが求められます。

カウンセラーは、言葉の裏にある本当の気持ちや感情に対して注意深く聴き、共感することが必要ですが、普通の会話では、深い理解を示すことは必ずしも求められません。

さらに、カウンセリングでは、話す内容が問題解決に向けた方向性を持っていることが重要です。

カウンセラーは、話を整理し、問題を明確にし、問題解決のための戦略を一緒に考えることが求められますが、普通の会話では、目的が特にない場合が多いです。

これらの違いからわかるように、心理カウンセリングは、ただ話を聞くだけの普通の会話とは異なるものであることが分かります。

ここでは、カウンセリングと会話の違いとして、よくいわれる「構造化」「医療モデルでなく成長モデル」「場面構成」の3つの要素についてご紹介いたします。

1、構造化

構造化とは、カウンセリングにおいて、カウンセラーが事前に用意した手順や流れに沿って進めることで、セッションを効果的に進めることができるという考え方です。

例えば、カウンセリングを始める前に、カウンセラーがクライアントに自己紹介をしてもらったり、話し始める前にカウンセラーが「今日はどんな話をしたいですか?」と聞いたりすることが挙げられます。

また、セッションの途中でカウンセラーがクライアントの感情や思考を整理するための手法や質問を用いたり、セッションの最後に今後の対処法や次回のセッションの予約を行ったりすることも構造化の一例です。

  • どのような部屋で
  • どのくらいの時間
  • どのくらいの頻度
  • 料金
  • キャンセル時はどうするのか

などですが、これらの構造化は、クライアントを守るためでもありますし、クライアントにの問題として捉える枠組みをつくったり、非日常を作りだすという意味もあります。

構造化されたセッションを行うことで、クライアントは自分自身が抱える問題をより明確に理解することができ、カウンセラーとの信頼関係を築きやすくなります。

また、カウンセラー自身も、セッションの進行をスムーズに進めることができ、クライアントに最適なアプローチを取ることができるようになります。

2、医療モデルでなく成長モデル

カウンセリングというのは、一般的に「医療モデル」と呼ばれるアプローチとは異なり、「成長モデル」と呼ばれるアプローチを採用しています。

医療モデルは、病気を治すことに主眼が置かれたアプローチで、患者が健康であることを目的としています。医師が病気の症状を診断し、治療を施して症状を改善することが目的です。
そのため、医療モデルでは、問題解決に向けた戦略を採用し、結果の出方に重点を置きます。

一方、成長モデルは、人間の成長と発達を促進することを目的としたアプローチです。

カウンセリングは、クライアントが自己理解を深め、自分自身をよりよく理解することで、より良い人生を送るための支援を行います。

このアプローチでは、クライアントが自己成長を遂げることを目的とし、結果に焦点を置くのではなく、プロセスに焦点を置きます。

クライアントが、もし「正しい」アドバイスを与えた場合、そのアドバイスを実行する、しない、できる、できない…などという葛藤・焦りなどが起こったり、問題解決の所在がクライアントからカウンセラーに移り、おかしな状況になってしまいます。

カウンセリングにおいては、問題解決するのは、クライアントであって、カウンセラーは、ともに考え悩み、問題解決を援助する存在になります。

カウンセリングは、クライアントが自分自身をより深く理解し、自分自身を発展させるための成長のための支援を提供することを目的としています。

3、場面構成(structuring)

場面構成とは、カウンセリングセッションにおいて、カウンセラーがセッションの進行を意図的に調整し、クライアントが話したいことや問題点に集中できるようにすることです。

つまり、セッションを構成することで、クライアントの気持ちや思考を整理し、問題を解決するためのヒントを見つけ出すことができます。

場面構成を行うことで、カウンセリングセッションが有意義になります。
例えば、カウンセラーはセッションの冒頭で、クライアントに「今日はどんな話をしたいですか?」と質問し、クライアントが話したいことを整理します。

その後、カウンセラーはクライアントが話している内容に合わせて、適切な質問を投げかけ、深く掘り下げることで、クライアントが自分自身の問題を理解し、解決策を見つけることができるように導いていきます。

一方、一般的な会話では、場面構成を行わないことが多く、話題がどんどん変わっていくことがありますし、相手の話をただ聞くだけでなく、自分の話をすることが多いため、相手の気持ちや問題に焦点を当てることができない場合があります。

3、まとめ

日常会話とカウンセリングの違いについて説明いたしました。
両者とも相手あっての会話ではありますが、表面的な関係を築く日常会話と、深層心理まで深く入り込み相手の考えや行動に変化を起こすカウンセリングは全く異なるものですね。